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【東京ヴェルディ】ロティーナ監督の抱擁

こちらは井林を抱擁するロティーナ監督。さらに強く抱きしめていたのは……。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

一番強く抱きしめられたのは…。

[J1参入PO 1回戦] 大宮 0-1 東京V/2018年11月25日/NACK5スタジアム大宮

 J1参入プレーオフ1回戦、J2レギュラーシーズン6位の東京ヴェルディが5位の大宮アルディージャにアウェーで1-0で勝ち、2回戦にコマを進めた。

 59分に内田達也が二度目の警告で退場処分を受けて、10人対11人の数的不利になる劣勢を強いられた。だがよりシンプルに、自陣ゴール前を固めながら数少ないチャンスを狙う方策にシフトし、選手たちもそのプランを共有し合う。迎えた70分、佐藤優平のFKにDF平智広がジャンプヘッドですらして、値千金の決勝ゴールが決まった。

 そして試合終了の瞬間、東京Vのベンチは歓喜に沸いた。選手、スタッフ、そして監督がみんな同じように輪を作って祝福し合った。その喜びの大きさは、チームの結束を物語っているようだった。

 そしてロティーナ監督は、ゴール裏に挨拶に向かいながら選手一人ひとりを抱き寄せる。誰よりも強く抱きしめていたのが、内田不在のなかでひとつのミスも許されない状況下で慎重にパスを散らして体を張って試合をコントロールし続けた中盤の井上潮音だった。

「嬉しかったです。監督にあんなに抱きしめられたのは初めてでした。少し驚きましたが(照笑)。僕もですけれど、本当に勝ちたかった。それだけ監督も嬉しかったんだと実感しました」

 井上はこのタフな90分間を経て、一段と逞しさが増したようだった。

 ロティーナ監督は試合後、「私たちはあくまでも目の前の1試合1試合に勝つことしか考えてこなかった。もちろんプレーオフで(J2・6位ですべてアウェーである)私たちは勝利が必要だという状況は分かっているが、基本的には変わらず、目の前の試合のことを考えています。だから自信を持って、次の横浜FC戦の準備にかかって挑みます」と語った。さらに「逆に引き分けでも良いというシチュエーションの横浜FCのほうが、プレッシャーが掛かるのではないでしょうか」と、相手の心理にも触れた。

 後半途中、ロティーナ監督はまずレアンドロを投入しようとしていた。しかし内田の退場によりプランを変更し、先にパワーに加え守備力も備えた李を先に入れた。そして得点のFKの場面で、レアンドロを投入。まさにその直後、レアンドロがニアに飛び込み相手を引き出すことで、平のゴールが生まれた。結果的に、文句なしの絶妙な采配になった。

 そのようにして、レアンドロがコンディションを高めてきたのもプラス材料だ。まだ出場できずにいる中心選手たちも、2日には間に合うかもしれないという。東京Vが勢いをつけて、三ツ沢決戦に挑む。

取材・文:塚越始
text by Hajme TSUKAKOSHI

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