イエローカードは策略!?大久保嘉人が明かす新人鈴木冬一とのバトル

バトルを繰り広げた磐田の大久保嘉人(左)と湘南の鈴木冬一(右)。(C)SAKANOWA

「勢いがあって良かった。ただ、俺は狙い目だと思った」

[J1 6節] 湘南 0-2 磐田/2019年4月6日/Shonan BMWスタジアム平塚

 ジュビロ磐田のJ1歴代得点ランク1位のFW大久保嘉人と、湘南ベルマーレで売り出し中の高卒新人MF鈴木冬一が同サイドで対峙し、激しいバトルを繰り広げた。

 ポジション的には磐田の小川大貴と鈴木がマッチアップする構図。ただ、シャドーの大久保が左サイドに張り出すことで、鈴木の攻撃参加を封じると同時に起点を作った。

 前半の19分には、大久保がボールをキープして腕でブロックしたころへ、鈴木が負けるものかと強気にタックル。しかしボールをリリースした大久保の足を蹴る形になり、鈴木に主審からイエローカードが提示された。

 1982年生まれの大久保が国見高校卒、2000年生まれの鈴木は長崎総合科学大附属高校卒。年の差は18歳あるが、いずれも高校サッカー界を牽引してきた小嶺忠敏監督の教え子という共通点がある。

 大久保も「小嶺先生の教え子ですよね」と鈴木のことを認識していて、今回のマッチアップについて次のように振り返った。

「いいんじゃないですか。うん、勢いがあって良かった」

 そのように18歳の鈴木のアグレッシブさを評価。一方で、そこを徹底的に突いたことも明かした。

「ただ、俺はあそこが狙い目だなと思っていた。まだ若くて、線も細い。あのファウル(19分のイエローカードが出された場面)をさせたのも、ずっとディフェンスしかしていなくて、わざとボールをさらして『来るな』と思ったら、案の定来てくれました」

 百戦錬磨の大久保は、守備に追われている相手の心理を突き、ファウルをもらいに行ったという。結果、警告を受けたことで、鈴木はそのあと球際によりアグレッシブに行けなくなる。そこで磐田はさらに攻勢を強めた。大久保は次のようにも言っていた。

「だから、どんどん狙って、ウイングバック(小川大貴)も走って上がっていくと、そこに付いて行っていいのか分からなくなっていた。付いていけば、俺のところが空きましたから」

 後半、湘南はシステムと選手の並びを変更。大久保と鈴木のマッチアップは解消された。ただ、そういった駆け引きのなか、72分、今度は右サイドに張り出した大久保が起点となって松田天馬のマークをかわしてパスを放つ。するとサイドからゴールライン上へと持ち込んだ松本昌也のシュートがオウンゴールを誘った。

 90分の中で、プロ20年目の大先輩が高卒新人にひとつ教鞭を執った形となったと言えた。

 そして大久保は、鈴木の今後を楽しみにしていた。

「1年目だからね、これからでしょ。(何か印象に残った特長などは?)うーん、まだまだだね。これから試合に出続けることが一番大事。頑張ってほしいね」

 高卒ルーキーで、こうして開幕直後から試合に出ている。その大きな可能性に、大久保も期待を寄せていた。

 一方、そのイエローカードが出たシーンでの大久保の『狙い』を伝えると、鈴木は次のように語っていた。

「僕もそういった形でボールを受けることが多く、同じようにやるプレーをしてきたので、そこでイエローカード覚悟というつもりではなかったですけれど……思い切って行きました」

 やはり、ちょっと”挑発”に乗ってしまったところはあったのかもしれない。

「腰はひけていてはいけないと思っていました。先輩…と自分から言っていいのか分かりませんが、偉大な成績を残す選手と対人でできたことは、今後につながるかなと思います」。そしてポジションは異なるものの、「超えたい。いつか超えたいです。そういう気持ちがあります」と、漠然とではあるものの、大久保を超えるような存在になっていきたいと意欲を示した。次はインパクトのあるプレーで、大久保の記憶に「鈴木冬一」の名前を刻みたい。

 きっと大久保も次なる対戦を楽しみにしているはずだ。試合中はもちろんキャリアなど関係なく闘っていた。ただ、終わってみれば、ある意味、大先輩の大久保が鈴木をはじめ湘南の若い選手たちに胸を貸すような構図になっていたと言えた。結果論になるが、そんな勝負どころの駆け引きの差が、スコアにも表れた。

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

Posted by 塚越始

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