【日本代表考察】久保建英を招集すべきはコパか? U-20W杯か?

昨年のU-19アジア選手権で、強烈な直接FKを叩き込んだ久保建英。U-20代表の中心選手として、U-20W杯に臨むべきでは? (C)AFC

U-20日本代表の中心選手として世界との真剣勝負に臨むべきでは?問題の根底に、両大会の「目標設定のなさ」。

 FC東京のMF久保建英を巡り、6月にブラジルで開催されるコパ・アメリカでの日本代表招集案が浮上している。しかし一方、彼が中心選手して戦ってきたU-20日本代表は同時期(5月23日開幕)に開催される20歳以下の世界一を決めるポーランドU-20ワールドカップ(W杯)に臨む。

 Jリーグの首位を走るFC東京の攻撃を開幕から牽引する17歳の久保を、A代表に引き上げるべきか、それともU-20代表の主力としてU-20W杯を戦わせるべきか――。

 5月7日にU-20ワールドカップのメンバーが発表される。おそらく、そろそろ……日本代表の森保一監督とU-20代表の影山雅永監督の間で、選手選考に関する最終確認が行われる頃だろうか。

 4月14日から16日まで行われたU-20日本代表候補のトレーニングキャンプのあと、森保、影山の両監督が、それぞれ久保のみならずU-20世代からA代表への引き上げについて、この5、6月にもあり得ることを示唆する発言が飛び出した。

森保監督
「協会(日本サッカー協会)のほうで影山監督と話し合いながら、どのようにチーム作りを進めていくのか。選手の今の状況などについては情報交換し協力し合っています。(U-20W杯、コパ・アメリカ、トゥーロン国際大会と)同時進行で大会があるので、選手をどうするのか、というところは、話し合っていくやっていきたいです。まずは(コパで)どのようなメンバーが組めるのか、関塚技術委員長と話して、所属クラブと調整していただいています。そこでどのような選手が招集できるのかを踏まえて、影山監督とも話していきたいと思っています」

影山監督
「(U-20W杯に向けて)どの監督であっても、フルメンバーで臨みたいと思うものです。ただ我々が日本を代表する選手に携わっている時に考えなければいけないのは、その選手、個人が将来、最終的な勝利を掴むまで、最善のいい経験をさせてあげることが、それぞれに大事だと思っています。我々は各選手にとって、どのステージを踏ませてあげるべきか議論していくことは大事だと思います。日本人スタッフ同士なので、そういった意見交換はスムーズにできます」

 U-20ワールドカップよりもフル代表のステージが優先されるべきだという、ニュアンスだった。

 力のある選手は、少しでも高いカテゴリーの代表チームで戦うべきだ。というもっともな意見がある。ただ、アジアの島国である日本は世界と真剣勝負する機会が限られる。そのため年代別のアジア予選とW杯を重視し、U-20W杯、五輪での育成に重点を置くことで、日本代表の進化につなげてきた(失敗した時期もあった)。そういった背景がある。

 前者は基本的には世界的な潮流である。ただ、近年であれば、オランダ、アルゼンチン、ブラジル、ドイツ、イングランドなど、年代別代表からの育成に力を入れたことで、その後のA代表の強化につなげた国も多い。

 何より森保体制は発足から各世代別代表と協力体制を築き、プロカテゴリーであれば、U-20代表、東京五輪、そしてA代表と3方向から強化を図りながら、東京五輪を経て、完全なる「日本代表」になるプランを立てていたことが伺える。外国人選手がA代表監督を務めてきた間に起きた”不条理な選手招集”は解消され、そういった日本全体でのチーム作りは非常に有効であると感じてきた。

 しかし、日本代表は今年アジアカップ決勝で敗れ、3月のキリンチャレンジカップ2試合もパッとしなかった。明るい話題をあまり提供できずにいるなか、起爆剤として、降って沸いたように、若い選手を活用しようとする話が浮上してきた。それが本当であれば、やや場当たり的な感は否めない。

 そもそも今回のコパは日本代表の中心である欧州組は参戦できず、「フル代表」では臨めない。それが選手にとってはチャンスでもある一方、わざわざU-20W杯よりも優先すべきであるかは首を捻るところだ。

 ただ森保監督は基本的に「あらゆる選手にチャンスはあり、結果を出せば門戸を開く」というスタンスを貫いてきただけだと言える。そこで単純に久保招集も否定しなかっただけで、メディアを通じて話が膨らんでしまった感もある。一方、影山監督が言うように、10代の有望な選手にとって、どのステージの経験が将来にとって大切かは、十分に配慮し検討すべき点だろう。

 問題の根底に、U-20W杯、コパ・アメリカ、いずれも目標設定が定まっていない点が挙げられる。

 例えば、リオネル・メッシは2005年にアルゼンチンU-20代表としてオランダワールドユース(現U-20W杯)で、2008年にU-23世代で北京五輪で、チームを世界一に導いている。各年代の大会で「目標は世界一」というそれぞれの重圧がかかる段階をクリアすることで、アルゼンチン全体のレベルを引き上げ、彼自身も世界一のタレントになっていった(今のところW杯制覇だけは達成できずにいるが)。

 影山監督は「世界を驚かせてやろう」というスローガンを掲げる。ただ、日本協会としての具体的な目標は、コパ・アメリカを含め聞かれない。

 久保に関して言えば、U-20日本代表は彼が中心選手として戦える機会にもなる。FC東京とはまた異なる自覚や責任が求められる。実際、現在の飛躍的な成長を語る時、彼が自らの力でポジションを掴み取り、圧巻のパフォーマンスを見せつけた昨年のU-19アジア選手権での経験は外せない。それも「U-20W杯の切符を掴む」という目標があったからこそ。

 U-20W杯の具体的な目標を立てて臨むことになれば、必然的に久保は外せない戦力になっていく気がする。加えて「個人の成長」を優先することで、これまで着々と積み上げてきたU-20日本代表がチームとして機能しなくなっては本末転倒でもある。

 果たして、久保(をはじめU-20世代)をコパに呼ぶべきか、U-20W杯に専念すべきか――。おそらく答えはない。どちらも正しいとも言える。

 ただ、来年は東京五輪というビッグイベントがあり、日本代表は世代交代への舵を切ろうとしている。さまざまな背景を考えると、久保をはじめU-20世代は、今回、ポーランドでのU-20W杯を優先すべきではないかと考える。

 U-20代表も、A代表も、いずれもベストメンバーを組めず共倒れ……という事態だけは避けなければならない。何より、日本協会としての育成と強化の「道」がちょっと周りには見えくにくなってきているだけに――それがジャパンズウェイになるだろうか――そこはしっかり示していくべきだと感じる。

文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

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