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【検証 J1参入PO】「J1・16位」の大アドバンテージはおかしくないか?J2勢はスクラムを組むべき

昨年のJ1参入決定戦は磐田が意地を見せて残留を果たした。2019年、昇降格を懸けたラスト1枠を巡る戦い。どのようなドラマが待っているのか。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

本来「罰ゲーム」のはずが…ホーム開催、90分引き分けは”勝利”扱い。

 J1参入プレーオフ。今年もこの季節がやってきた。

 J2レギュラーシーズンの6位までJ1昇格のチャンスを広げることでリーグの活性化を図ろうと、2012年、「J1昇格プレーオフ」が誕生した。するとさっそくシーズン6位だった大分トリニータが下剋上に成功し、劇的な形でJ1昇格を果たした。さらに翌年には徳島ヴォルティスが四国勢初のJ1行き、続いてモンテディオ山形もGK山岸範宏の奇跡のヘディング弾で勢いをつけて復帰を果たすなど、いくつものドラマが生まれてきた。

 しかしこの「J2の3枠目」で昇格したチームが、なかなかJ1で成績が振るわない。上記3チームをはじめ、ことごとく力の差を見せつけられ1年で降格を喫してきた(一方、セレッソ大阪、名古屋グランパスはJ1での戦いを継続している)。

 そういった背景もあり、2018シーズンから、これまで自動降格だったJ1・16位チームがプレーオフに加わり、「J1参入プレーオフ」「J1参入決定戦」の”二本立て”で、「3枠目」を争う形になった。

 昨季はロティーナ監督(現・セレッソ大阪監督)率いるJ2の東京ヴェルディが6位からトーナメントを制し、J1・16位のジュビロ磐田との「J1参入決定戦」に臨んだ。結果、磐田が踏ん張って2-0の勝利を収め、J1残留を果たしてみせた。

 ただし、その前回、レギュレーションで疑問の声が挙がり、多くの人が違和感を覚えたのが、その「J1参入決定戦」での「J1・16位」への大きなアドバンテージだった。

 力を発揮し切れないシーズンを過ごし、過去のレギュレーションであれば自動降格していた16位。しかし復活戦であり、ラストチャンスである参入戦が設けられた。本来、どちらかと言えば”罰ゲーム”にあたるだろう。

 ところが「J1・16位」には、参入決定戦で優越権が与えられる。

・試合はホーム開催(一本勝負)
・90分1本(延長、PK戦なし)。引き分けの場合は”上位”であるJ1チームの残留が決定する

 1年をかけて勝ち上がってきたJ2の代表より、負け続けてきたJ1・16位のほうに”上位特典”がもろもろついてくる。

 これには現場でも疑問の声が挙がっていた。ロティーナ監督や東京Vの選手からは「J2のトーナメントで順位の優越があるのは分かる。しかし、なぜ、決定戦までJ1チームにそこまでアドバンテージがあるのか」といった声が聞かれた。

昨季の東京Vは”昇格男”林陵平(右、現・町田)と、平智広(左)の活躍で急激に勢いつけていったが――。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

 実際、前回のヤマハスタジアムは、磐田にとって罰ゲームというよりもボーナスゲームという雰囲気だった(そういった空気を作り出した磐田サポーターの力でもあるが)。試合開始の時点で、かなり磐田が優位にある状況から始まった。もはや、東京VにJ2代表としてのアドバンテージ、J2勢のチャレンジャーとしてのメリットは感じられなかった。

 いやいや、J1・16位のほうが力があるのだから、アドバンテージは当然だ、という意見もある。分からなくもない。しかし、であれば、このプレーオフを行う意味がそもそもないのでは? という議論になってくる。昨季の磐田の残留に異論はなく、あらゆる条件をしっかり活かして勝利を収めた。ただ純粋に、ほぼ同じ条件で戦った場合、どっちが強いのだろうか? という興味であり視点は大切にしたいところだ。

 すでにその時点では、翌シーズンの日程は決定していたのだろう。今回の2019シーズンも、同じレギュレーションで行われる。J1・16位の優位は変わらない。

 では果たして、2020シーズンはどうなるのか? J1参入決定戦やプレーオフ自体に、何かしら変更点はあるのか。次回の実行委員会あたりで、最終決定するのだろう(すでに決定している?)。

 もしも変更点がないのであれば、J2のクラブのトップは一体何をしているのか、という話になってくる。なんなら将来的に関係してくるJ3勢、さらにはリーグ全体を活性化させたいと考えるJ1勢も加わり、こうしたテーマこそ、スクラムを組むべきではないか。

レギュレーションの変更を考えた場合、例えば――。

・ホーム&アウェーの2試合制
・中立地開催
・J2代表チームのホーム開催
・J1・16位チームのホーム開催にするとしても
…90分+延長・PKにできないか――

などが選択肢になるか。

 いずれにせよ2試合制ではなく一発勝負の開催であれば、「90分引き分けはJ1・16位の勝利」という規定はなくすべきではないだろうか。

 2015、2016年のJ1リーグに採用された2ステージ制も瑕疵があったが、こうした特別ステージを設けた場合、誰もが納得いくものにはならないのだろう。一方、この戦いもまたエンターテイメントであり、時に少しずつ、時に大胆に変更していくべきでもある。1チームごとに降格救済金がかかり、Jリーグが3チームは降格させたくないのでは? という声も聞く。プレーオフによりJ1チームさらに多く降格した場合、Jリーグからの支出が数千万円かかるのは確かに大きい。ただ、あくまでDAZNマネーなどを効果的に活用するためにJリーグが設けた制度であり、それがこの”J1優位”のレギュレーションにしている一番の理由ということはないだろう。

 いかにして人々の関心を引き出し、興味を持たせるか。そうした仕掛けとして、プレーオフは十分な効果がある。ただ、J1・16位のチームが戦々恐々とするレギュレーションにしたところで、おそらく大多数の人は受け入れるはずだ。「負けたんだから仕方ないだろ」と。そして、1年間を戦い抜き、這い上がってチャンスを掴み取ったJ2チームが、全面的とは言わないまでも、あと少しばかり報われればと思う。

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[文:塚越始]

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