【シアトルレインの日々 #2】川澄奈穂美は常になでしこジャパンを意識してきた

川澄は昨年、月間MVPを受賞。今季のシアトルレインは目下NWSLの首位を行く。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

唯一、世界一を目指して戦える場所だから。

 アメリカ(NWSL=ナショナル・ウーマンズ・サッカーリーグ)のシアトルレインで3シーズン目を迎える川澄奈穂美は、常になでしこジャパン(日本女子代表)を意識してきたと言う。

 なぜなら、なでしこジャパンが唯一、女子サッカー選手として世界一を目指して戦える場所だからだ。

 2011年のワールドカップ・ドイツ大会制覇、2012年のロンドンオリンピック準優勝、2015年のワールドカップ・カナダ大会準優勝――。川澄はなでしこジャパンの上昇期に一気にその能力を開花させていった。

 彼女のポテンシャルがまずあってこそだが、やはりなでしこジャパンを取り巻く環境の変化やチーム自体の進化があってこそ、ともに躍進を遂げられた。とはいえ、その上昇気流に乗れる選手はほんの一握り。しかも同世代の多くの選手が引退するなか、川澄は今なお人生の挑戦を続けてきた。

 FIFA女子ワールドカップ・フランス大会(2019年開催)のアジア予選を兼ねたアジアカップ・ヨルダン大会が4月に開催される。そして川澄が2年ぶりになでしこジャパンに復帰した。

 E-1東アジア選手権では北朝鮮に完敗し、アルガルベカップではカナダに6失点大敗を喫するなど前回大会に続き6位に終わった。なでしこジャパンは常にあと一歩、上へ突き抜け切れずにいる。

「ベテランっぽく、チームを落ち着かせるようなことはしない」

 川澄はこのチームでの自身の立ち位置をそう語っていた。

 今回、様々な実績と経験を買われ、攻撃の突破口として招集されたのだと彼女は理解している。若手とは異なり、監督の想像を超えるほどのパフォーマンスを見せなければならないことももちろん承知している。クラブチームの中で切磋琢磨し合ってきたシアトルレインでの日々と同じように。

 一方、川澄は“高倉ジャパンの新人”という立場でもある。この招集されずにいた2年間の想いをぶつけるはずだ。新鮮な戦力として。

 岩渕真奈、横山久美、長谷川唯ら徐々に成長してきた若い攻撃陣の特長を引き出し、川澄の個性が生きれば、必ず日本の攻撃は活性化される。

 4月1日のガーナとの親善試合を経て、7日にアジアカップ初戦のベトナム戦を迎える。シアトルレインで培った縦への意識を、なでしこジャパンのパスサッカーと融合できたとき、川澄は「背に腹は代えられず」ではなく「満を持して」投じられた一手となる。その先にまた新たな”世界”が待っている。

前編「川澄奈穂美がアメリカで掴んだ新たな感覚」はこちら

取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA

Posted by 早草紀子

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