【コラム】”ボランチ大迫”が「夢」を掴むまでの半端ない道のり

コロンビア戦で決勝のゴールを決めた大迫(15番)と歓喜する日本代表の選手たち。写真:新井賢一一/(C)Kenichi ARAI

ケルンでのジレンマを乗り越えて。昨年の代表戦2ゴールのうち1点が本田のCKからだった――。

「昔からの夢が叶った」

 FIFAワールドカップ・ロシア大会グループリーグのコロンビア戦(6月19日/サランスク)で日本に2-1の勝利をもたらす決勝点をヘッドで叩き込んだ大迫勇也は、まず満面の笑みを浮かべてそう語り喜びを噛み締めた。

 2014年のブラジルW杯では2試合に出場したもののノーゴールに終わった。グループリーグ敗退に終わった責任を痛感し、その悔しさを晴らせるのはワールドカップの舞台しかないと、4年後のロシアに照準を絞って取り組んできた。

 ただ、つい半年前、大迫はどん底と言えるチーム状況の下、もがき苦しんでいた。

 所属クラブの1.FCケルンはブンデスリーガ開幕から未勝利が続き、7節を終えて勝点わずか「1」しか奪えず最下位を”独走”していた。

「ゴールにこだわっていきたい」大迫だったが、確実にボールを収められる能力をチームに還元するため、当時のシュテーガー監督の下、2列目をメインに起用され続けた。さらに、試合中には前線にフィジカルの強いアタッカーを並べ、大迫がボランチに起用される機会も増えていった。

 例えば昨年10月13日のアウェーでの8節シュツットガルト戦、大迫は4-4-2の2トップの一角で先発。先制点を許すものの、プレッシングを怠らず拮抗した展開に持ち込む。そして後半途中から大型FWギラシーが投入されると、大迫はボランチにシフト。すると狙い通り、ケルンの13番(大迫)が起点となって1-1とする同点ゴールを奪ってみせた。

 さらに畳み掛けて迎えた88分、ギラシーがペナルティエリアで倒されてPKを獲得。これを決めれば、ついにケルン今季初勝利か!!……と思われたのだが、何とVAR(ビデオアシスタントレフェリー)でPKは「無効」に。大迫を含めチームは動揺を隠しきれず、直後に失点を喫して敗れた。

 結局、トップ下でも、ボランチでも、チームのためであれば仕方ないと、どこのポジションで戦っても結果を残せない。本人も「これではただ試合に出ているだけ」と肩を落としたが、希望のポジションでプレーできず、しかも勝利にもつなげられない。そんなジレンマに陥っていた。結局、監督は交代したものの、大迫はさらにサイドハーフも担うなど、前線には固定されなかった。

 チームは挽回したものの最下位のまま来季2部降格が決定。大迫はヴェルダー・ブレーメンに移籍する。

 一方、日本代表でも、小林悠、川又堅吾、杉本健勇、興梠慎三といったポストワークに長けるFWが招集されていた。

 ムービングタイプであるうえに、なおかつ確実に前線でボールを収められるタイプ。特に昨年11月のフランス遠征、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を制した浦和レッズの興梠の招集には、ヴァヒッド・ハリルホジッチ前監督が、このまま大迫の状態が上がらなかったときなどを想定していたことが伺えた。

 もちろん、ハリルホジッチ前監督が大迫に寄せる信頼は厚かった。ただし、徐々にクラブでの「活躍度」も選考で重視するようになり、そんな空気を察して大迫も「試されている立場にある」と語るようになっていた。

 それでも大迫はブレずにいた。強調していたのが「僕には目標があるから」。

 それこそがワールドカップでゴールを決めること――。自身のゴールで、日本を勝利に導くことだった。

 昨年、大迫が日本代表で決めたのはわずか2ゴールだった。結局、W杯アジア最終予選後、10月6日のニュージーランド戦(〇2-0)で決めて以来、ゴールネットを揺らせずにいた。

「クラブとは異なる役割をして、より前を向いて勝負してほしい」と大迫に注目し続けたハリルは解任に。その荒療治を経て就任した西野朗新監督のもとでも全試合で起用されてきた。

 そしてコロンビア戦の73分、本田圭佑のコーナーキックにヘッドで合わせて決勝弾を沈める。ちなみに昨年大迫が奪ったもう1点は、6月13日のW杯アジア最終予選のイラク戦(△1-1)の開始8分、本田圭佑のCKにヘッドで合わせて決めたものだった。

 コロンビア戦とは逆サイドからのキックだったが、まるで左右対称にしたかのようなジャンプヘッドだった。まるで、すべての出来事が、このゴールを決める瞬間へと連鎖していたかのようでもあった。

「セットプレーは本当にたくさん練習してきたので、その練習通りの形を出せました。みんなの力で決められたと思います」

 大迫は胸を張って言った。

 この「夢」のゴールを決めるまで、この半年間だけを切り取っても起伏に富んだ道のりでドラマがあった。ということは……28歳の大迫と、彼を支えてきた人たちにとって、どれだけの想いが込められた1点となっただろうか。

 とはいえ、もちろんまだ戦いは始まったばかり。本人も「まだあと2試合(24日:セネガル、29日:ポーランド)。しっかり切り替えて臨みたい」と気を引き締めていた。このファーストゴールを出発点に、また新たな挑戦の旅路が始まる。

文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

Posted by 塚越始

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