【W杯データ検証】本田圭佑があえて走らなかった理由

日本代表の本田圭佑。 写真:新井賢一/(C)Kenichi ARAI

FIFA発表のヒートマップ、布陣変遷から読み解く西野監督の意図。本田が「フタ」をした。

 FIFAワールドカップ・ロシア大会のコロンビア戦、70分から交代出場した本田圭佑は、コーナーキックから大迫勇也の決勝点をアシストし、2-1の勝利に導く一仕事をした。一方、平凡なバックパスのミスからピンチを招くなど、全体的に動きが重く感じられた。

 FIFA(国際サッカー連盟)が公式ホームページで発表しているデータを参照し、日本の「背番号4」の投入でどのように試合が動いたのかを検証する。

 まず本田のこの試合のトラッキングを振り返る。アディショナルタイムを含めたプレー時間は26分1秒。走行距離2.864キロ(オンザボール:1.318キロ、オフザボール:896メートル)。他選手と比べて、そこまで少なかったわけでもない。

 ただ出場時間が短かったとはいえ、スプリント回数4回はワーストタイ(10分間出場の岡崎[6回]より少なく、15分出場の山口と同数)、トップスピード19.80キロ/hもワースト。そのため、走れていない、という印象を強めたと言える。

 加えて、本田投入まで右MFを務めた原口のトラッキングデータは半端なかった。オンザボールの走行距離4.708キロ、スプリント回数56回、トップスピード32.18キロ/hはいずれも両チーム通じて「1位」。総走行距離10.158キロは長友に次いでチーム2位だった。

 本田は徐々にそんなアグレッシブだった原口とポジション(右MF)を入れ替わりながらプレー。原口と本田、運動量の落差が激しく、一段と走力の物足りさを際立てた。

 しかし、その「落差」こそ、むしろ西野監督の狙いだったと見ていい。

コロンビア戦に出場した日本代表の14選手のヒートマップ(プレーエリア)。オンザボール、オフザボールともに、色が濃いところほど多くいた。4番・本田、8番・原口、19番・酒井宏に注目。(FIFA HPより引用)

 原口(8番)、酒井宏樹(19番)のヒートマップ(プレーエリア)を見ると、数的優位だったこともあるが日本の右サイドで敵陣深くまで走り切っていることが分かる。酒井がセンターラインより高い位置でのプレーのほうが長かったことが分かる。

 日本の右サイドは言ってみれば、アグレッシブ。言い方を替えれば、数的優位にもかかわらず、上下動が激しくスペースを与えやすくリスキーだった。

 しかも布陣変遷の後半、「45-60」分、「60-75」分を見ると、イスエキエルド(21番)がポカンと一人、日本の右サイドで余っていた。さらにイスエキエルドが下がったあと、「75-90」分は、ハメス・ロドリゲス(10番)とジェルソン・レルマ(16番)がやや日本の右サイドよりでプレーしていることが分かる。

 本田のヒートマップは、右サイドの高い位置に集中している。つまり本田が右寄りでプレーしたことで、試合を落ち着かせるというプラスをもたらした。右サイドを原口と本田で、「フタ」をしたのだ(75分以降の布陣変遷参照)。

コロンビア(左)対日本(右)の布陣変遷。丸数字はそれぞれのチームの背番号。後半戦のみ。「45-60」分、「60-75」分、「75-90」分、アディショナルタイムの4つ。75分以降、本田(4番)の投入後、コロンビアも日本の右寄りに選手が来ている。(FIFA公式HPより引用)

 それまで攻め上がっていたホアン・モヒカ(17番)のオーバーラップが減った(ハメスのスペースを消さないように配慮したのだろう)。

 ハメスのブレーキが日本を助けたのは事実だが、結果的に、日本の狙いはハマった。加えて言うならば、徹底的に日本をスカウティングしてきたコロンビアにとって、2大会連続W杯の初戦でゴールを決めている「HONDA」は警戒すべき一人だった。本田の登場で相手を自陣に押し込むということにも成功した。

 いずれにせよ試合がバタつくのをどのように抑えて、勝利をもたらすのか。本田投入には、そんな西野監督の狙いが感じらた。

 結果的には、決勝ゴールをもたらすアシストをして、さらに右サイドの高い位置に「フタ」をして試合を落ち着かせた。他の選手でも良かったのではないか、という意見もあるだろうが、本田だからこそもたらした「効果」があったことも事実だ。

「相手が10人で80分以上。そのアドバンテージを生かし切れなかったとは言い難い。(アシストは)わずかの出場時間でも決勝点に絡む仕事ができて、そこに関しては嬉しく思っています」

 そのように”俺を先発から使え”と言わんばかりの主張もまた、本田らしい。

「欲を言えば、決勝点を決めたかった。結果を残さなければ評価されない。ただ、このあとの試合のほうが大きいと思っている。一つ勝っただけ。もう一つ勝って、予選突破を目指してやりたい」

 コロンビア戦で担ったのは、それまでのチームのリズムを”壊す”という多少リスクのある役割だった。試合翌日は別メニュー調整だった本田だが、セネガル戦、さらにはポーランド戦――今度はどのような仕事を託されるのか。

文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

 

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