PKビッグセーブの舞台裏、鹿島守護神があえて時間を掛けた理由とは?

鹿島のGKクォン・スンテ。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

クォン・スンテがゆっくりと、サポーターの声援を力に変える。

[J1 29節] 鹿島 0-0 川崎/2018年10月7日/県立カシマサッカースタジアム

 劣勢を強いられたなか、前半戦の終盤、鹿島アントラーズが川崎フロンターレにPKを与えてしまう。ペナルティエリア内でトリッキーなトラップに交わされたCBチョン・スンヒョンが、小林悠の背中に被さるよになる。すると村上伸次主審は笛を吹き、ペナルティスポットを指したのだ。

 PKのキッカーは、倒された小林悠自身が担う。すると鹿島の守護神クォン・スンテはペナルティスポットに立つなど、ゆっくり時間を懸けて小林と駆け引きをする。

 そして、背中に鹿島サポーターの大きな声援を受けながら――。小林が助走に入ると、鹿島の背番号1はじっと蹴られる瞬間まで動かない。そして右足でシュートが放たれた瞬間に飛び、左手になんとかボールを当てて弾き出した。

「小林選手は最近のPKで正面に蹴っていたので(9月27日の湘南ベルマーレ戦、秋元陽太にセーブされて0-0の引き分けに終わる)、その選択肢も残しながら、ギリギリまで見て飛びました」

 クォン・スンテは湘南戦で失敗していた小林のPKなどデータも頭に入っていたと説明。そして駆け引きについて、次のように舞台裏を明かした。

「(小林が蹴るまで)ゆっくり意図的に、時間を使いました。私たちのホームで戦える。その最大の利点がサポーターの心強い大きな声援でした。私たちのほうが優位な立場にあり、キッカーを圧倒するような雰囲気を作り出せればと思いました。あの場面、サポーターの声援が力をくれました。その力を、本当に最大限に生かせました」

 守護神はそのように語り、鹿島サポーターの後押しに感謝した。

 13節の浦和レッズ戦(3万3647人)以来の3万人台となる3万1798人が来場した。その大半を占める鹿島サポーターの熱い想いが、この大ピンチでさらに強大な力を与えてくれたと言う。

 4試合負けなしと勢いをつけつつあった川崎相手の無失点と勝点1の獲得は、評価できるだろう。ただクォン・スンテは、あくまでも勝点や勝利の先にある「優勝=タイトル」「AL圏内」といった具体的な目標を見据えていた。

「1試合1試合。すべての大会、すべての試合で、優勝の可能性がある限り最善を尽くす。それが鹿島アントラーズ。だからまた改めて、目の前の1試合に全力を尽くすのみです」

 目の前の勝利を掴むため、全力を尽くす。鹿島スアントラーズのスピリットだ。そんなクラブにかかわるすべての人の想いが結集されたからこそ生まれた、クォン・スンテのビッグプレーだった。

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

Ads

Ads