【ファインダー越しの世界】宇佐美貴史は戦える選手だと証明するために奮闘していた

デュッセルドルフで2シーズン目を迎える宇佐美貴史。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

アウクスブルクで浮かべていた晴れない表情。

 昨年10月下旬に遡るが、ブンデスリーガで戦う日本人選手たちを撮影するため機上の人となった。

 そのひとり宇佐美貴史は2017―18シーズン序盤、戦いの舞台を2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフへと移した。

 これまでゴール裏から見た彼のドイツでのプレーで、最も印象に残っているのが2017年2月17日の対バイヤー・レバークーゼン戦だった。ただし、その印象は決して良いものではない。

 当時、宇佐美が所属していたのは1部のFCアウクスブルク。チームは前週の1.FSVマインツ戦(宇佐美は90分から交代出場)で上手く機能せず、状況を変えるためだろう、この日本人アタッカーをレバークーゼンとの一戦に先発出場させた。しかし、宇佐美は満足のいくサッカーをピッチで描くことはできなかった。

 同じ左サイドのDFにボールを預けてくれと要求する。しかし、超大型CFをターゲットとしたロングキック攻撃が多用され、宇佐美の足元にボールが収まる機会は限られた。

 選手がピッチに立てなければ悔しいと思うのは当然だ。だが、宇佐美の場合はピッチに立っていても、自分のサッカーができないもどかしさを抱いているようだった。

 試合後、ロッカールームへと立ち去る彼にレンズを向ける。その苦しい胸の内は、どこか晴れない表情に表れていた。

デュッセルドルフで見せた充実感。8か月前とは明らかに違っていた。

 出場機会を減らした宇佐美は昨夏、新たな活躍の場としてデュッセルドルフを選んだ。

 2011年7月にバイエルン・ミュンヘンの一員としての扉が開いたとき、彼はヨーロッパ最優秀選手になるという野心を高らかに掲げた。日本人にも創造力に溢れたハイレベルなサッカーができるということを、世界のトップリーグで実証しようと考えていたのだろう。

 しかし挫折とも直面した様々な経験によって、宇佐美の意識はまず現実的に戦える選手でなければならないと変化したようだ。

 昨年10月30日のVflボーフム対デュッセルドルフ戦。宇佐美はチームに必要とされていた。

ボーフム戦、マークをかい潜る宇佐美。1部よりフィジカル面で強さが要求される舞台で結果を出そうと奮闘。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

 彼はボールを受けるとドリブルで仕掛け、CKを含むプレスキッカーも担当。ディフェンスも精力的にこなしていた。その表情はフラストレーションを感じさせた8か月前とは明らかに違い、サッカーができている充実感があった。

 フィジカルを生かして潰そうとしてくるファイタータイプの選手の厳しいプレッシャーを受けて、思い描いた通りのプレーをできないときももちろんあった。ただ、その2部リーグの舞台で、宇佐美は戦える選手であることを証明しようと奮闘していた。

 デュッセルドルフでさらなる逞しさを身に付けられれば、宇佐美が表現しようとしているサッカーは一段と光彩を放つことになるだろう。きっと見せていってくれるはずだ。ハードに戦え、しかもイマジネーション豊かなプレーを兼ね備えた雄姿を。

文:徳原隆元
text by Takamoto TOKUHARA

Posted by 徳原 隆元

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