「”文化”には大人がサッカーできる環境も」原博実氏インタビュー【Jの挑戦②】

Jリーグ原博実副理事長が、「Jクラブの理想像」について語る。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

クラブの理想形の一つと言える、ビジャレアル育成年代の取り組み。

FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会の興奮冷めやらぬなか、7月18日にはJ1リーグが再開する。誕生から25周年を迎え、新たな25年に向かうJリーグの原博実副理事長に、「これからのJリーグ」について語ってもらった連載2回目。少子高齢化をはじめ社会とスポーツ界が大きな時代の変化を迎えるなか、Jリーグ、そしてJクラブが求められる役割とは――。(3回連載/2回目)。【→前回はこちら】

――Jリーグ誕生から25年間の変化の一つとして、以前は強豪や名門同士のカードが注目されてきましたが、現在、サポーターが支持しているのはダービー。大阪ダービー、多摩川クラシコ、甲信ダービー、神奈川ダービー、埼玉ダービー……地元の対決は、近年、とにかく盛り上がります。そこは新たな傾向に挙げられます。

 いいよね。普段は仲がいいけど、そのときになると盛り上がる。むしろ、そこがサッカーの原点。文化になってきている。

――ただ地方都市の課題と言いますか、人口減は避けて通れません。そのなかで、どのようにサッカーを根付かせていくか。学校単位で11人を集めるのも一苦労となってきているようです。

 中体連、高体連の役割は変化していくだろう。だから、そこはサッカーのみならずスポーツ全体で関係者を巻き込み、指導者をはじめ一緒にやっていきたい。街が元気になるようにやってみましょうよ、と。前回話に出た水戸は、廃校を利用して練習場を作り、街役場の支所、公民館も併設した複合施設の機能も備えさせた。地元にとって身近な存在であり、町民の方も活用してください、と。一つのあるべき姿だと思う。正直なところ、大きなスタジアムを作るより、そういった練習場のほうがニーズはあると感じる。

 東京など大きな町では一般の人がやりたくてもサッカーができない。校庭に入ってはいけない、公園でボールを蹴ってはいけない。それでサッカーやろうぜって言っても、スクールに入るしかない。大人はできない。サッカー大国と言われるところは、そういった誰でも楽しめる環境がまず整っている。

――そこがサッカーを文化にするための根幹にあたるところかもしれません。

 芝生や人工芝のピッチを1面から2面にして、盆踊りや夏祭りはそこでやろうよって、そのほうが余程、地元のためになる。繰り返すけど勝敗は重要。でもプロクラブはその勝ち負けを越えた存在になっていかないといけない。Jリーグ誕生から25年。新たな25年は老人が増え、子供は減り、社会もスポーツ界も一気に変わっていく。

 例えばスペインのビジャレアルに行ったとき、Jリーグ特任理事でビジャレアルの女子部統括責任者を務めた経験のある佐伯(夕利子)さんからいろいろ話を聞いた。各アカデミーの選手は3週間に1回、障がい者施設や老人ホームなど社会福祉施設に訪れ、ときに重度の障がい者の方と接する機会も持つ。

 地域の施設への訪問によって、そういう環境の中にクラブがあるのだと学ぶ。クラブはその訪問を練習より大事だと位置づけているので、選手は必ず行き、実感を得る。みんなが揃って行う新人研修もいろいろメリットはあるけど、そういった取り組みの効果も計り知れないと思った。Jリーグも一律でやるだけでなく、そんな話を紹介することで『ウチもやってみるか』というクラブが出てきてもいいよね。

――なるほど。Jリーグが目指す具体的な理想形の一つと言えますね。

 3週間に1回、社会福祉施設を訪れる。長い人生を考えたら大切なこと。しかも、そのあと、子供たちの練習に対する眼差しが変わるそうだよ。同時に、訪問を受けた方たちの目も変わる。いいよね。つながっているんだ。だから選手たちも、『行ってやっている』というわけではなく、『自分たちのほうが学んでいる』という姿勢に変わってくる。そんなクラブはたくさん増やしたいと思う。

 勝てなければ、クラブのトップが責任を取る。それはそれでいいし、当たり前。だけど人材を育てて地域に根付かせることも大切。単純に言えば、仲間を増やす。そこは時間をかけて取り組むべきだと思う。

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

※次回最終回は明日7月18日(水)、テーマは「Jリーグの理想のクラブ数」「Jクラブスタッフの待遇問題」など、少し具体的な話に踏み込んでいます。お楽しみに!

Posted by 塚越始

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