センターバックの阿部勇樹が背中で受け止めたサポーターの力

サポーターから渡された2007年の優勝時と同じフラッグを10年ぶりに掲げた、浦和の主将・阿部勇樹。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

「真っ赤なサポーターの笑顔が心に響いた」。最終ラインでサポーターとチームをつなぎ、10年ぶりに世界へ挑む!

[クラブW杯]12月9日/浦和レッズ-アルジャジーラ/UAEザイード・スポーツシティ

堀孝史新監督のもと、阿部勇樹は3-4-2-1のボランチから4-1-4-1のセンターバックにポジションを変えた。ペトロヴィッチ前監督時と基本的な役割は変わらず、重心を一列後方にした感じだ。チームの守備の厚さを増すために。

阿部のセンターバック起用は、実際のところ、浦和レッズにメリットとデメリットをもたらした。メリットはペトロヴィッチ体制下で最大の課題だった守備の安定を図れたこと。ただしデメリットは逆に攻撃の迫力が薄れたこと。

5年半もの間、生命線といえるリンクマンを務めていた男が最後方にポジションを移したが、チーム全体が攻撃のスイッチを入れる役割(キーパスやサイドへの展開など)を阿部にまだ頼っている(求めている)感じのまま、Jリーグのシーズンを終えた。徐々に長澤和輝が新たなスイッチャー役を担いつつあるものの、少なからずミシャ時代のビルドアップのタイミングがまだ身体に染み付いている印象だ。その改善は来季の課題になる。

一方、阿部が手に入れたものがある。彼が最終ラインに入り、浦和レッズサポーターからの声援が一段と耳に入るようになった。その声をしっかり力に変えている。

AFCアジアチャンピオンリーグ(ACL)で優勝を決めたあと、彼は言った。

「簡単な試合はひとつもなかった。今回(埼玉スタジアムでのアル・ヒラルとの第2戦)もそうだった。選手だけで戦っているわけではない。レッズに携わるスタッフ、サポーター、みんなが戦って、最高の雰囲気を作ってくれた……。チームみんなで戦った。だからこそ嬉しかった」

ACL優勝が決まった瞬間、阿部はまずゴール裏のサポーターに向かってガッツポーズを作って咆哮し、人目もはばからずに泣いた。ピッチで泣いたのは、レスターへ移籍するラストマッチとなった2010年9月5日の天皇杯2回戦・東京国際大戦以来ではないだろうか。昨季ルヴァンカップを制した時よりも、サポーターとの距離はさらに近づいていた。

「みんなが喜んでいる顔が見えたから。選手の笑顔、それに真っ赤なサポーターの笑顔を見ることができて、心に響いた」

センターバックの阿部勇樹は、ゴール裏のサポーターとチームをよりガッチリとつないだ。しかも意識したわけではなく自然体で。そんな些細なような大仕事をやってのけられたのは浦和のキャプテンマークを着けてきた22番――阿部勇樹にしかできなかったことだ。9日、クラブワールドカップの初陣、アルジャジーラ戦を迎える。2007年以来、この大会に再び臨むのはこの男だけだ。阿部を中心に、浦和が総力を結集して世界に挑む。

文:サカノワ編集グループ

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