ユニオン・ベルリンの監督交代は内田篤人にとってむしろチャンスも――悲観だけするのは安易だ

「恩師」を失った内田だが、それだけで立場が悪くなったと捉えるのは安易かもしれない。(S)SAKANOWA

前指揮官の戦術に、内田が必要とされていたかと言うと…。

ユニオン・ベルリン行きを選んだ最大の要因だったイェンス・ケラー前監督が解任されたため、内田篤人のチーム内での立場が厳しくなったという見解が出ている。果たして、そんな単純な話なのだろうか。ユニオン・ベルリンのケラー体制下での戦いぶりを振り返ると、全てを悲観視すべきではない状況が浮かび上がる。

今季の好調時、ユニオン・ベルリンは3トップ+トップ下の4人が前線に張り出し、4バックがしっかり守備を固め、センターハーフがパスを散らしセカンドボールへの処理に走る戦い方をしていた。ざっくり言うと、「攻撃専門」と「守備専門」の分業をする、非常にシンプルな戦術を採用していた。

それがハマった時の爆発力は凄まじく、一時は2部リーグ首位争いを演じていた。ただ、上位陣など相手のレベルが上がると、途端にトーンダウン。アタッカーが止められてしまい打開策を見出せずにいた。

そして右サイドバックのレギュラーを務めてきた30歳の元オーストリア代表クリストファー・トリンメルは189センチ・80キロの大型DFで、1対1の対人守備に強さを発揮。基本的には自陣を固め、攻め上がって組み立てに加わったり、クロスを放ったりする機会は限られた。言ってみれば、周囲と連動しながら様々な役割をこなす内田とは対照的だった。

周囲の良さを引き出すなど連係面の能力の高さを買われて加入した内田だが、ケラー前監督が起用し続けたのは、言ってみれば180度異なるタイプの「守備力重視」のタレントだった。

「勝ち続けているチームの最終ラインのメンバーを変える必要はない。そのことは理解している」と内田は語っていた。そう考えると、10月中旬からの大腿部の肉離れによる離脱がなければ、内田に出番が巡ってきていたかもしれない。彼が良いコンディションをキープできていれば……チーム状況はまた変わっていたかもしれない。離脱する前の練習で、明らかに周囲とは異なる高いパフォーマンスを見せていただけに、なおさら残念に感じる。

そういった点を踏まえると、指揮官交代により「恩師」が去ったことが、内田にあらゆる面でマイナスに働くとは言えない。クラブはそういった単純なスタイルに違和感を覚えていたと解釈できる。もしかすると、ケラー前監督自身も薄々は、理想とは異なるスタイルに違和感を抱きながらも、結果を求めるあまり、組織より個を重視する戦いを進めてしまったとも考えられる。

もちろん、ユニオン・ベルリンU-19を率いていたアンドレ・ホフシュナイダー氏のトップチームへの監督昇格には、「身内」を大切にしたいという意向が汲み取れる。そうなれば、内田の立ち位置は厳しくなることは確かに考えられる。

一方、1部昇格へのこのチャンスを逃したくない。そういうクラブの思惑であれば、むしろ内田には出場のチャンスが巡ってくる可能性は高まる。これまでの監督――ケラー氏の今季のスタイルを否定したのだから、内田が買われる可能性はある。

思い出してほしい。選手の入れ替えが、ある意味、ヨーロッパの中でも最も激しいクラブのひとつであるシャルケで、5人の監督のもとでレギュラーを務めてきた男だ。フェリックス・マガトに見初められ、そこからケラーとも出会っている。

「チャンスが来る時は来る。何事にも流れってあるから」と内田は言っていた。それがユニオン・ベルリンでのプレーなのか、それとも別の選択肢になるのか、それは現時点では分からない。ただ、新チームでチャンスが訪れることは大いに考えられる。誰もが驚いた、突然の監督交代劇。しかし内田の今後の立場を安易に悲観すべきではなさそうだ。

取材・文:塚越 始
text by Hajime TSUKAKOSHI

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