【浦和L】菅澤優衣香、最高の2020年にするために。「自分自身への不甲斐なさと…」皇后杯決勝のあと流した悔し涙
皇后杯決勝のあと、涙を浮かべる浦和レディースの菅澤優衣香。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
なでしこリーグに続いて、タイトルまであと一歩。別れる仲間を思い、涙がさらに溢れた。
女子の2019シーズン最後のコンペティションとなった皇后杯の決勝、NACK5スタジアム。1万人を超える大観衆が訪れ、8割方は浦和レッズレディースの初優勝を後押しすべく詰めかけた、赤いサポーターだった。
ホームさながらの雰囲気のなか、浦和Lが対峙したのは、なでしこリーグ、リーグカップ、女子アジアクラブ選手権と「3冠」を手にしていた女王・日テレ・ベレーザだった。
しかも開始7分、最初のCKで田中美南に先制点を奪われてしまう。
それでも、浦和Lはそこから簡単には崩れない。何としても1点を返さなければ――。その重責を、前線に立つエース菅澤優衣香は感じていた。
1トップ気味の菅澤が対峙するのは、積極的かつ強度の高い守備を誇る土光真代と宮川麻都。一人抜いても、さらにもう一人が立ちはだかる。
女王を相手にチャンスは限られる。幾度となく動き直しては背後のスペースを狙い続けた。トップ下の高橋はなにフィニッシュさせる形からも揺さぶった。20分には、CB二人の間をドリブルで割って入る強気なプレーを見せた。
しかし浦和がゴールを割ることはできなかった。
そして試合後、菅澤は涙を浮かべた。
「自分自身への不甲斐なさと、サポーターの皆さんに最高の雰囲気を作ってもらっていたのに勝つことができなかったこと……すべてが込み上げてきました」
菅澤の目からさらに涙が溢れて悔しそうにしたのが、この決勝を最後と決めているチームメイトの顔を見た瞬間だった。感謝、無念、回顧……あらゆる感情が駆け巡っていった。
今季就任した森栄次監督のもと、縦への推進力を強めるサッカーからしっかりボールをつなぐサッカーに転換した。イメージ通りできない時期もあったが、リーグ戦は最終盤まで暫定首位をキープして2位に。森監督は「予想以上」とこの1年の選手たちの奮闘を評価していた。
選手たちも感覚は同じだ。ベレーザ、INAC神戸レオネッサ(3位)との直接対決では手応えもあった。ただ、「優勝」のリアリティを掴めずにもいたようにも映った。
決勝まで進んだ皇后杯では、リーグ戦で優勝を逃した痛みを原動力にした。ゴールや勝利への執着心がチームを成長させた。それを結実させようとしただけに……菅澤は「めちゃくちゃ悔しいです」と悔し涙を浮かべた。
「自分たちらしいサッカーができたという気持ちがあるから、もっとできたんじゃないかなと思います。だからこそ自分が決めないと。みんなは信じてやってくれてたから。やられたという感覚はそんなにありません。もう一度ここに戻ってこられるように頑張ります」
リーグに引き続き、皇后杯もあと一歩でタイトルを逃す形にはなった。それでも、まだ歩み始めたばかり。菅澤は「次こそは――」と自信を持って次なるステージに挑もうとしていた。彼女の頬をつたった悔し涙は、来シーズンの浦和の飛躍を予感させるものだった。
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[文:サカノワ編集グループ]