殊勲の決勝弾、齋藤学が「川崎のヴィニシウス」長谷川竜也から“学んだ”こととは?
齋藤学!写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
左サイドから、矢のようなチームにアクセントを与える攻撃ができていた。
[ACL GS2節] 川崎 1-0 シドニー/2019年3月13日/等々力陸上競技場
アジアチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージ(GS)2節のシドニーFC戦、途中出場の齋藤学が83分に中村憲剛の右クロスのこぼれ球を右足で振り抜き、決勝点をねじ込んだ。主催者のアジアサッカー連盟(AFC)が発表するマン・オブ・ザ・マッチにも選出。試合後の公式記者会見で、齋藤は率直な想いを語った。
「短い出場時間の中で結果を出せたのはすごく嬉しいですが、個人的にはそれ以外のプレーがあまり良くなかったので、そこは反省しています。外(ベンチ)から見ていて、左サイドから良い攻撃ができていて、そこから学ばなければいけないというプレーもすごく多かったです。勝ったということはフロンターレにとって大きかったと思います」
その左サイドの攻撃について、齋藤は具体的に次のように説明した。
「僕が評価する立場ではないですけれど……そのような言い方でいいのか、竜也はレアル・マドリーのヴィニシウスみたいに、矢のようなアクセントを与える攻撃ができていました。右で少しポゼッションしたあとに左へ展開すると、すごく良い形ができていた。ショートカウンターもありました。後半に入ると、相手のサイドバックとサイドハーフの背後にある狭い裏のスペースも突けていたので、すごく大きかったと思います。竜也は、そこからドリブルで中にも、縦にも使えていましたし、相手のディフェンスにとっては嫌だったのではないかと思います」
そのなかで交代出場した齊藤は、よりゴール前でプレーすることを意識したそうだ。
「僕が入った時には同じことを続けることと、もう一つスピードアップすること。もう少し、中央で受けて、ラストの点を決める作業に絡んでいくことを考えていました。いろんな人の想いが乗ったゴール。何よりあそこにいたことがゴールにつながったと思います」
またその記者会見で、齋藤に次のような質問も飛んだ。
『齋藤選手のプレーは、マリノスのイメージが強いので、自信を失っているように見える。勝負しようと思えばできるところでバックパスを出している。何かちょっと足りないものがあるのでは?』
斎藤は隣に鬼木達監督がいたこともあり、「それは個人的に聞いてくださいよ」と笑い、言葉を選びながら次のように語った。
「(2017年10月に)前十字靭帯(損傷による手術)をやって、それからフロンターレでどのように輝いていくのかを考えたなか、ポゼッションに加わるという新たなチャレンジを始めました。
自分のドリブルは両極端で、ボールを失うか、失わないか。仕掛けることでボールを失う可能性は高まります。
そのリスクを懸けるバランスが非常に難しいなか、今回、竜也がすごく良かったように、ダミアンが加わったことで、少し今までになかったような縦に速いプレーやクサビを入れた進入が増え、僕個人としては、昨シーズンよりも自分のプレーを出せていると思います」
齋藤はそのようにレアンドロ・ダミアンの加入効果を説明。次のように続けた。
「ゼロックススーパーカップの15分間、開幕のFC東京戦の10分間、相手が引いたなか、少しドリブルで行くことによって相手の目線が少し僕に集まり、そこで間を突こうというプレーを何度か見せることができました。そこからもう一枚剥がしにいくことをしていなかったので、それをするようになったら皆さんが知っていた時のようなプレーが出てくるのではないかと思っています」
川崎では川崎の、横浜FM時代とは異なるスタイルを追求していると、齋藤は改めて強調した。
「29歳になりますが、自分としての成長は感じています。それをどこで出せるか分かりませんが、試行錯誤の日々を過ごせています。マリノスはマリノスで僕のイメージは良かったかもしれませんけれど、フロンターレの自分をこれからもっと見せられたらいいなと思いますし、今日1点取ったことは、何かキッカケになったかなと思います。明日もキツイ練習が待っているので、そこに向けて準備するだけです」
川崎の左サイドは、これからJリーグ屈指のホットゾーンになってきそうだ。
文:サカノワ編集グループ