なでしこを支える新たな柱、熊谷紗希が”賭けた”選手ミーティングの効果は?
デンマークに無失点勝利。CBで主将の熊谷(右)は確かな手応えを掴んだ。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「遅すぎるけど、ようやく一歩を踏み出せた」。再び世界への挑戦が始まる。
なでしこジャパン(日本女子代表)が3月7日(日本時間午後11時55分開始)、アルガルベカップ最終日の5・6位決定戦でカナダと対戦する。
グループステージ第2戦はアイスランドに2-1、第3戦はデンマークに2-0と連勝を収めた。その2試合で課題だった高い位置からのプレスをメインとした守備がハマり、そのことに誰よりも安堵したのがCBの柱、そして主将としてチームを支える熊谷紗希(オリンピック・リヨン)だったのではないだろうか。
オランダ戦での6失点大敗を受けて、彼女が中心となって選手主体の全体ミーティングを開いたのだ。これまで漠然としていた守備について、チーム共通のルールを設定。結果、守備が安定し、それが攻撃面でもプラスをもたらした。
成功するかどうかは蓋を開けてみなければ分からない。万が一失敗すればチームは混迷を極めるかもしれない。覚悟が必要だった。
そしてアイスランド戦で手応えを掴み、選手が入れ替わったなかでのデンマーク戦で無失点勝利。熊谷はようやく肩の荷を少し下ろせた。
危ない場面はあった。後半には右からのクロスにテーゲルセンにフリーで頭に合わせられた。「完全にやられたと思った」と熊谷は思ったが、ボールはゴールの右に逸れた。その直後に先制点をもぎとり、ロスタイムに追加点。最後まで何とか凌いだ日本が勝点3を手に入れた。
「遅すぎるけど、ようやく一歩を踏み出せた気がします」
熊谷はそう言った。
4月のFIFA女子ワールドカップ・フランス大会予選を兼ねたアジアカップまで、残された公式戦はカナダ戦を含めてあと2試合。細かい修正点を改めて確認し、強度を高める作業を行う必要がある。
高倉麻子監督はアイスランド戦後、「このチームが世界一になるためには、誰が出ても質が落ちない、または上がっていくチームにならないといけない」と語った。再び世界一へ挑むため――。熊谷をはじめとするベテランから若手まで、選手たちに共通の想いが宿った。
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA