米国から殊勲の一撃! 籾木結花が「やっと肩の荷が下りた」と語ったなでしこ復帰までの4年間の道のり│NADEHSIKO STORY 後編
『SheBelieves Cup』で優勝したなでしこジャパンの籾木結花(左)と長谷川唯。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「理想や現実がぶつかり合う。それがサッカーの面白さ」
[SheBelieves Cup 第3戦] アメリカ 1–2 日本/2025年2月27日12:30(現地26日)/スナップドラゴン・スタジアム(サンディエゴ)
『SheBelieves Cup』のなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)対 女王アメリカ女子代表戦、籾木結花(Yuuka MOMIKI)が開始早々に先制点を決めてみせた。4年ぶりの代表復帰――色々な人の様々な想いの込められていた一撃だった。
「決めちゃいましたね(笑)。やっと肩の荷が下りた感じもします。初戦(オーストラリア戦)は試合の最後のほうで少しだけ出られて、第2戦(コロンビア戦)は出番がなくて、練習時間も短かったので、今日60分出られて、やっと代表でプレーした実感が湧きました」
2024-25シーズン、籾木はスウェーデンのリンショーピングFCからイングランド・スーパーリーグのレスター・シティへ移籍を果たしている。現在2シーズン目を迎える。
「レスターでやっているのは“やりたいサッカー”ではないんです」
籾木はその言葉の真意を語る。
「フィジカルのところでまだまだ足りないところはあるけど、そこを伸ばしつつ、この高いレベルのなかでも自分の考えるサッカーをできるようにしていきたいです。
考えてサッカーをすることが自分は大事だと思っている反面、深く考えずフィジカルだけでゴールを決められればそれもまた『勝利』です。その理想や現実がぶつかり合うのが、サッカーの面白さだと思っています。
正直、レスターでのプレーはやりたいこと、だけではありません。でも、できることを増やしておくことは大事。自分の軸として『やりたいサッカー』をしっかり持ったうえでの今です」


ここまで乗り越えてきたものが認められ、籾木はなでしこジャパンに帰ってきた。
なでしこジャパンから離れていたスウェーデン時代、彼女にとってのなでしこジャパンはどのような存在か、と聞いたことがある。
籾木は少し考えて答えた。
「自分は代表のためだけにサッカーはしない、かな。今すごく子供の頃みたいな気持ちでサッカーが楽しい! って思えているんですけど、そこには反骨心みたいなものが報われて、純粋にサッカーが楽しい! と思えています。海外でこうして突き進んでいく過程でそれが評価されて代表に行くことにつながるのであれば、それはそれでもちろん嬉しいです」
ベレーザ時代の籾木は「日本女子代表、なでしこジャパンのため」「女子サッカーの未来のため」と、強い責任感を口にして、それにふさわしい存在になろうとしていた。むしろ、それにより苦しんでいる姿も見ている。
「代表から外れて、誰のためにやっていたのか……と考えることもありました。未来の女子サッカーのため。もちろん今もそれは思っています。ただ、そこにすごく引っ張られて、自分のサッカーを何か他に掴まれている感じがしてしまいました。(スウェーデン時代)今は自分の手に自分のサッカーがある幸せをすごく感じています」
全ての経験が道となり、今へとつながってくる。

そして紆余曲折を経た籾木がなでしこジャパンに戻ってくるのを一番待ち望んでいたのは、ひょっとしたらベレーザ時代からの盟友・長谷川唯だったのかもしれない。
長谷川は籾木のなでしこジャパン復帰を心から喜んでいた。
「モミと試合に出られたら、絶対にパス通す! って思っていたけれど、(オーストラリア戦では)普通に相手に消されててなかなか出せなかった(苦笑)。こっちは喜ぶ準備はできていました!」
籾木は豪州戦戦に「やっぱり分かり合える選手たちとプレーするのは楽しいです!自分にとっては特別な8分間になりました」と語っていた。
今回の招集メンバーでは、長谷川の他、田中美南、三浦成美、山下杏也加がベレーザ時代のチームメイトだった。それぞれがレベルを高め合ってきたなかで再会できたことを喜んでもいた。
「ニルス(ニールセン)監督はデータを用いながら、日本は考えてサッカーができるし、賢いし、ボールを持てると説明していました。ただオリンピックやワールドカップでは、相手のほうがボールを持つ時間が長くなっていて、そこを変えていきたいのだと伝わってきました。ボールを持って主導権を握ることを目指すのであれば、自分のやりたいサッカーに通じてもきます」
そしてパリ五輪金メダリストであるアメリカ戦、長谷川のパスを受けた籾木が反転し、ゴールを決めた。しかも日本がボールと試合の主導権を握り、2-1の勝利を収めてみせた。

そして籾木の歩んできた道はこの先へ――。ニルス新体制、まずキーパーソンになる予感も強まる。
アメリカ戦のあと、長谷川との息の合ったコンビプレーについて問われると、「やっぱりこの感覚、楽しいですね」と笑った。
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なでしこジャパン復権へ大きな意味を持つ”初タイトル”となった。

取材・写真/早草紀子
text and photos by Noriko HAYAKUSA