【なでしこ】三浦成美インタビュー「ポジショニングがめちゃくちゃ大事」。新司令塔が東京五輪、金メダルへ挑戦
三浦成美。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「三笘選手はもう本当に小さい頃から一緒。まさか一緒にオリンピックという舞台に立つチャンスが巡ってくるとは」
なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)が東京オリンピックに向けた試金石として臨んだ2019年のフランス女子ワールドカップ(女子W杯)はベスト16に終わった。しかしその大会で、覚醒を遂げたのが三浦成美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)だった。高倉麻子監督から絶対的な信頼を寄せられていた阪口夢穂(当時は日テレ・ベレーザ所属)のケガによる長期離脱により、そのポジションを担うべく三浦に白羽の矢が立った。
チームのまさに“心臓部”。156センチという身長でボランチを担うため、身体の向き、腕の使い方、コンタクト時の重心のかけ方などでき得る努力を重ねてきた。
今、三浦は正真正銘の“なでしこの心臓”となって、ホスト国として迎えるオリンピックの大舞台に挑もうとしている。
一問一答で、五輪への思いを語る。
―—幼馴染の三笘薫選手(川崎フロンターレ)、同じチームに所属していた久保建英(レアル・マドリード)など錚々たるメンツと幼少期を過ごしていますね。
「三笘選手はもう本当に小さい頃から一緒で、まさか一緒にオリンピックという舞台に立つチャンスが巡ってくるとは思ってなかったです。久保くんは4つも年が違うので、一緒にプレーしたことはありませんが、今回のオリンピックは知り合い多いな~って感じます(笑)」
――これまでで最も成長したと感じる時期は?
「2019年のワールドカップの年です。その前年に初めてなでしこジャパンに呼ばれたんですけど、ベレーザでも今までと違うプレーが出始めていました。その流れで入ったワールドカップで、結果はベスト16で終わってしまいましたけど、自分の調子とプレーが結構マックスにフィットしていました。個人的にですが、控えめに言ってもめちゃくちゃ楽しかった。大会に入るまでの準備も空き時間にもずっとサッカーの映像を見てたし、本当に没頭してて楽しかったです」
――ワールドカップで印象に残っているプレーは?
「アルゼンチン戦はスペースが割とあって、相手が上手く食いついてくれていたので、自分のところで相手を剥がせたり、一つ前にボールをつけたり、アイデアが勝手に出てくる感覚はありました。途中出場のイングランド戦は身体のキレがあり、剥がされた時に反応する感覚っていうのは今よりあったほど(笑)。気持ちが入り込んでる時って、自分では考えてないような反応ができたりします。よく『ゾーンに入る』と言いますけど、そういう感覚がすごくあった。世界大会だとこういうこと、結構あるんです」
—―要であるボランチのポジションで、一番大事にしていることは?
「ポジショニングはめちゃくちゃ大事! 例えばセンターバックからボールを受けて、インサイドハーフが見えたら出すみたいな感じだけだったんですけど、全体を上から俯瞰して見ているような感覚が掴めたんです。そうなると、どこから入っていけばいいのか、一個飛ばした方がいいのか、同じインサイドへ出すパスでも相手の動きにくさ、味方の動き易さが違うんです。そこは意識していますが、代表の時はど真ん中でボール受けるより、背負いながら受けることが多いので、身体の向きが悪いな~って思うこともあるので、そこは課題です」
――フランス女子W杯後、フィジカル的にも多くのことに挑戦していますね。
「中盤でボールを運ばれた時に一瞬の反転についていけなかったんです。なのでアプローチしたあと相手に一歩グッと入られた時、すぐ反転してそこから初速を出すトレーニングにずっと取り組んできました。あと腕の使い方で相手をブロックするトレーニングをやってみたら全然違う感覚だったので継続してやっています」
五輪で狙うプレーは?「ゴールです!」。初戦のカナダ戦へ。
――今チームはかなり戦術的なところの理解も共通認識も高まってきたと思います。
「ただ強度の高い相手に、どこまでハイプレッシャーを受けた時に出せるかが大切です。まず、相手と接しないようなところで……またポジショニングの話になっちゃうんですけど(笑)。自分がいいポジショニングをすることで1タッチで相手のプレッシャーを剥がせたり、タメが作れたり、相手がハメたいと思っても上手く剥がされちゃうようなポイントになりたいと思っています。どれだけ自分がそのポイントになれるかで、展開は変わってくると思います」
――オリンピックではグループステージで、カナダ、イギリス、チリと対戦します。楽しみにしている対戦はありますか?
「イギリスです! ワールドカップでイングランドと戦った時、めちゃくちゃいいチームだなち思いました。そんなにポゼッションサッカーをしていたわけではなかったんですけど、全員が戦術を理解してボールを回して、めちゃくちゃ上手い! 一番強いんじゃないかと思うので楽しみな対戦です
――自分たちの流れに乗った時に仕留めてやる! という一体感が生まれるチームに日本もならなければなりません。今必要なことは何でしょうか?
「最初に比べると共通認識をみんなが理解してるのは大きいです。それをもっと意識的に出していくこと。ここにボールが入った時には、もっと人数かけようとか、少しの意識で絶対変わると思います。戦術のところは結構落とし込めていると思うので意識と表現するところだと思います」
――ズバリ、オリンピックで狙いたいプレーは?
「そりゃもうゴール! ポジション柄、守備に回ったり、ビルドアップで味方を生かすプレーが多いので、自分のゴールへの意識が低いって思われてるかもしれません。ただ個人的にはオリンピックで点を獲ることは目標です。そこは果敢に狙っていきたいし、その意識があればゴールにつながる前への選択も増えると思っています。ミドル、狙ってますよ(笑)」
――きっとコンビを組むであろう中島依美選手(INAC神戸レオネッサ)もミドルシュート狙ってますよね。ボランチで得点量産、いいですね。
「それ最高ですね。オリンピックでは、できれば全試合に出場したいです。目標はやはり金メダルを獲る! ブレずにずっとそこを意識してきました。そのなかで自分の良さ、ここまで取り組んできたことを前面に出して結果にこだわりたいと思います」
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[取材・文・写真:早草紀子]