西大伍の注目フレーズ「自分が3人いれば」から浮かぶ神戸移籍の理由
鹿島から神戸への移籍が決まった西大伍。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
鹿島在籍の8年間に「とても楽しかったです」。本人さえも想像できない、さらなる”楽しみ”。
鹿島アントラーズのDF西大伍が1月7日、ヴィッセル神戸に完全移籍することが発表された。2017、2018シーズンのJリーグベストイレブンであり、元日本代表の決断。神戸の補強はとどまることを知らない様子だ。
西は鹿島と神戸、それぞれのクラブを通じて次のようにコメントしている。
▽鹿島
「8年間の在籍期間でサッカー選手として、また、人間として成長させて頂きました。今回、より大きな成長を求めて、移籍します。選手、スタッフ、地域の皆様、応援してくれた全ての皆様、本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
▽神戸
「ヴィッセル神戸でプレーすることを嬉しく思います。自身の成長とチームへの貢献のために移籍してきました。チームの目標を達成するため、そしてたくさんの方に心から応援してもらえるように選手、スタッフとともに頑張ります。よろしくお願いします」
いずれもシンプルな言葉だが、西らしさが詰まっている。勝利を目標に闘う集団の鹿島だからこそ生きた西のパッションとテクニックと奔放さ。ケガに苦しんだ時期もあったが、「とても楽しかったです」という一言で結んでいる。
そして彼は以前、こんなことを語っていたことがある。
「例えば、僕がチームに3人いれば、チームは楽だろうなって、本当にそう思っています。これが活字になると、何を言ってんだコイツと思われますけど、実際そう感じてきました」
天才肌だからこそのコメントだ。
アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャ、ルーカス・ポドルスキ、山口蛍……神戸には西とは明らかにタイプの異なる傑出したタレントが揃う。「3人の西」も見てみたいが、この中に加わった西も見てみたい。
西がこのタレント軍団に加わったら、どうなるのか? どのような化学反応が起きるのか?
それは、正直、誰にも分からない。西自身もイメージはできていないだろう。
だからこそ楽しみでもある。可能性も広がる。ワクワクするのは事実だ。そのあたりに、今回、移籍を決断した背景が見えてくる。
「『結果』はあとからついてくるもの。自分が成長するために日々を過ごして、それがチームのためにつながる。まず自分自身がどうするか。そこに懸かってくると自覚してやっていきます」
それが西の貫いてきたスタンスでもある。個の追及がチーム力につながる、と、ただ一方で鹿島でプレーしてきたプライドも忘れていなかった。
「ピッチ内で結果を出すための準備を、どれだけできるか。鹿島はそこを追求している。その本気度で言えば、他チームの『優勝を目標にしています』と言うのと、僕らが言葉にするのとでは度合いが違うと思ってきました」
神戸には神戸のカラーがある。ただ、神戸にとって、初の主要タイトル獲得は悲願。まだ、ルヴァンカップも天皇杯も最高はベスト4。タイトルマッチに臨んだこともない。西が鹿島で体に沁み込ませてきた勝ち癖を、イニエスタ、ポドルスキ、山口らとともに、どのように還元していくのか。そのあたりの役割も求められる。そして戦術家フアン・マヌエル・リージョ監督とも、感覚が合いそうだ。
文:サカノワ編集グループ