SB平戸太貴へ内田篤人の期待「技術はある。頭は悪くない。良いとは言わないけれど」
ベンチから戦況を見守った内田篤人。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
ジョホールDT戦の決勝点を奪う。「性格的にも、選手としても殻を破れ」とアドバイス。
[ACL GS1節]鹿島 2-1 ジョホール・ダルル・タクジム/2019年3月5日/カシマサッカースタジアム
「飛び込まなければいい。普通に相手の前に立っていればいい」
内田篤人が右サイドバックとして初めての公式戦に臨む平戸太貴に掛けた言葉は、そのディフェンス面の一言だけだったという。
試合前のウォームアップでは、まるで初めて試合に出る子供を見守るかのように、一緒の右サイドの位置から、攻撃練習する平戸の一挙手一投足にちらちら目を配り見守っていた。そこでは言葉をかわさなかったそうだ。
「攻撃面に関しては、技術もあるし。頭も悪くない。良いとは言わないけれど」
内田は、そのように評する平戸のポテンシャルの高さを認める。
「視野も広く、FKを蹴れて技術もある。J2でアシストと点を取っている。そのあたりは変な話、一列前(MF)でやるよりもプレッシャーが少ない分、(ルックアップして周りを)見る時間ができるから、攻撃に関しては何も言っていない。ディフェンスについて、本当に一言だけ伝えた」
43分、クロスがそのまま決まり、平戸の鹿島での初ゴールが記録された。一方、危ういミスパスもあり、サイドバックデビュー戦はポジティブとネガティブな両面が表出した。
内田は「良かった」と認める一方、課題も挙げていた。
「(ACLの初戦、マレーシアの強豪に2-1の勝利)悪くない。良いんじゃないですか。俺が出ていたら、1失点で抑えられたか分からない。彼(平戸)はどこでも真面目にやれる性格で、そういうヤツにチャンスは転がってくるものだから。
彼のやってきたポジション(攻撃的MF)は層が厚い。J2で結果を残しても、鹿島では良い選手がいる。そのなかで一皮剥けてやっていかないといけないかな。優しいから性格が。静かだし。もっと殻を破って、ぶっとんでいかないといけないと思う。やれるヤツってそういうタイプ、性格も、選手としても。試合が終わってパっと印象に残っているのは、(山口)一真やセルジ。一発を持っている選手。(平戸も)それを出せるようになって来ないと。センスや技術は、俺から見ても羨ましいレベルなんだからさ」
平戸は基本的には攻撃的MFで勝負していきたいと言う。あくまでもサイドバックはオプション。ただ、結果的には、内田はそのように評価していても、今回、ラッキーだったとはいえゴールを決めて結果を残したのは収穫になったが、「武器」の技術面で何かを発揮することはあまりできなかった。
内田の敵陣のギャップの突き方、安西幸輝の勝負所での馬力の発揮の仕方、昨季まで鹿島にいた西大伍の長短の“球種”の使い分け……平戸もSBではフリーでボールを受けられることを活かして、自分にしかない「武器」を示したい。
まずは――内田も良いけれど、平戸もありだね。いや、平戸のほうが良いだろ――と言われるような鹿島の右サイドバックの選択肢に加わってきたい。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI