×

【G大阪×仙台】今野は反則だった!? GKシュミットとの競り合いでJFA審判部が解説

仙台のGKシュミット・ダニエル。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

「キーパーチャージ」は現在のルールではない。GKもフィールド選手と同じ扱いだが…。

[J1 9節] 仙台 2-1 G大阪/2019年4月28日/ユアテックスタジアム仙台

 ベガルタ仙台対ガンバ大阪の32分、G大阪のコーナーキックの場面で、GKシュミット・ダニエルの前に、G大阪の今野泰幸が入る。ボールが飛んできたところで、ふたりが競り合う形になる。すると今野がシュミットをブロックするような形になる。シュミットが今野の前に出てジャンプしたもののパンチングできず、その背後にいたキム・ヨングォンにヘディングシュートを叩き込まれた。山本雄大主審は今野のファウルを取らず、キム・ヨングォンのゴールを認めた。

「DAZN」の人気コンテンツ「Jリーグジャッジリプレイ」でこのシーンが議論され、日本サッカー協会(JFA)の上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャーが「今野選手のファウルでも正しかった」と見解を示した。

 まず、上川氏はどういったプレーが現在、GKに対するファウルになるかを説明した。

「以前(1997年前)であればゴールエリアでGKのプレーを邪魔することはファウルになっていました。要するに、GKは(ゴールエリア内で)守られていました。しかし、今はGKのみに該当するファウルはなくなり、一人のDF(フィールドプレーヤー)と同じように見る、ということに変わっています。したがって、正当なプレーのなかでGKの動き阻止したり、プレーをさせないことは、認められると考えられます」

 そのうえで、次のように今回のプレーについて解説した。

「レフェリーは得点を認めています。レフェリーの判断として、受け入れられる接触の強さだったのかなと思います。しかし、今野選手のプレーをリプレイで確認すると、明らかにGKの動きを邪魔しようとしていた意図がうかがえます。ボールが飛んできているのに、ボールに対してプレーしようとする動きをしていません。背中を向けながら、最後はお尻あたりで、シュミット選手がジャンプするところを少し押しています。その接触でファウルを取るかどうかの判断は、主審に委ねられて良いと思います。しかし、(GKの動きをただ止める)意図はあるし、主審がファウルを取れば、それは認められるものでもあったと思います」

 そのように、今野のファウルであっても妥当だったという見解を示した。

 一方、番組に出演していたJリーグの原博実副理事長は、次のように自論を語った。

「シュミットがよりスケールの大きな選手になるためには、このぐらいの時、今野と競り合っても、ボールに触るぐらいなってほしい。だから個人的にはゴールを認めていいと思います。経験値のある今野が役者として一枚上手だったかなと思いました」

 一方、似たシーンが47分にあった。仙台のコーナーキックで、今度はGK東口順昭の前に、吉尾海夏が入る。ポジションの取り合いをする際、東口が吉尾を背中から少し体で押し、一方、吉尾は肘を出して牽制するようにしたところで、山本主審がキックが蹴られる前に二人に対し注意をする。

 そしてコーナーキックが放たれると、東口の前でブロックした吉尾のファウルが取られた。そこで、仙台ベンチは抗議。32分のG大阪の得点シーンとの判定のブレを指摘したのだ。

 まず、原氏は吉尾のファウルは妥当ではないかと語った。

「最初の競り合いでやりすぎだと注意され、再びやっているようでは、ファウルを取られても仕方ないと思います。東口もそれを分かって対応している。しかもシュートが入っていないということもあります。一度注意されたら、そこは選手が気を付けないといけない」

 一方、上川主審は「ノーファウルだと思います」と、再び原氏とは逆の見解を示した。

「先ほども言ったように、GKだから、ということで守られてはいません。DFであればノーファウルで流していたプレーだったのではないかと思います。確かに原さんがおっしゃるように一度注意していたこともあります。ただ、比較をすると、どちらかというと今野選手のほうが反則だったと思います。もちろん、(いずれも)主審の判断の範囲内ではあると思います」

 基本的には、最も近くでプレーを見ている主審の判断を尊重すべきだ、という立場ではあった。ただ、珍しく、ふたつのプレーで、上川氏と原氏で考えが分かれた。

 いずれの解釈も正しいと言えるのが、また興味深いところではある。

 原氏がシュミット、吉尾がよりスケールアップするための指摘は、確かにその通りだと感じる。実際、32分のプレーでは、今野はまだ主審から注意を受けないなかでの駆け引きをしていた。

 一方、例えば、もしも(すでに第一線を退いているが)上川氏がこの試合で主審を務めていたとして、「競り合いでボールに行っていないでしょ」とファウルを取って今野に指摘し、そこで反省した今野が改めて競り合いの仕方を考える――という流れができていたとしても、それはそれで有意だったとも言えた。

 VTRで確認をしたなかでも、人によってはルールの解釈が異なることもあり得るということだ。

文:サカノワ編集グループ

Ads

Ads