湘南対名古屋、主審の判定に審判部が二つの”ダメ出し”
二つの問題のシーンに絡んだ名古屋のジョアン・シミッチ。写真:上岸卓志/(C)Takashi UEGISHI
湘南に与えられたPKは「主審の判断を尊重すべき」。一方…。
5月4日に行われたJ1・10節の湘南ベルマーレ対名古屋グランパス戦の50分、ゴール前に抜け出してパスを受けようとしたジョアン・シミッチが後方から坂圭祐のタックルを受けた。そこで今村義朗主審はファウルを告げる笛を吹いて、坂にイエローカードを提示した。しかし、そのこぼれたボールを和泉竜司が拾い、あとはシュートを決めるだけという決定機になっただけに、アドバンテージを適用してプレーを流したほうが良かったのではなかったか? そのシーンが「DAZN」のコンテンツ「Jリーグジャッジリプレイ」で取り上げられ、日本サッカー協会(JFA)審判委員会のレイモンド・オリバー副委員長が詳しく解説をした。
まず、多くの人が指摘する通り、アドバンテージを適用しても良かった、という意見について、オリバー副委員長は「主審はコンマ数秒か1秒、(名古屋へのアドバンテージで)待っても良かったですね」と認めた。
しかし一方、この坂のタックルが「ドグソ」(決定機の阻止)にあたるかどうかについて、詳しい説明がされた。
「ドグソ」かどうか見極めるのは、次の4つの要素からなるという。
・反則した地点とゴールの距離
・プレーの方向(ゴールに向かっているか)
・守備側競技者の位置と数
・ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性があるかどうか
オリバー氏は、シミッチのプレーは全ての条件を満たしており、坂に対し「レッドカードを出すのが妥当だった」と見解を示した(もしも4つの全てが揃っていなければ、イエローカードになるということだ)。
「つまり、その反則がなかった場合、選手(シミッチ)が得点できたかどうかを考えなさいと、主審たちに伝えています。この場合、(反則がなく)シミッチ選手がプレーを続けた場合、ゴールする可能性がありました」と、オリバー副委員長はドグソの見極め方を語った。
整理すると、主審が坂のファウルをイエローカードだと判断したならば、アドバンテージを適用すべきだった。
しかし、このプレーはレッドカードが妥当。レッドカードを出す場合は、原則としてアドバンテージを取るべきではないため(退場するはずの選手がピッチに残ってしまうので)、「主審はファウルの直後に笛を吹き、レッド(カード)を出すべきだった」という考えが示された。
つまり、今村主審が、イエローカードを出すのであれば、名古屋のアドバンテージを取るすべきであった。ただし、そもそも、この判定はレッドカードが正しかった。と、オリバー副委員長は、二つの問題点を指摘していた。
一方、44分に岡本拓也がシミッチのスライディングタックルで倒されPKを獲得した場面があった。しかしVTRで振り返ると、シミッチがボールへ先に触れたようにも見える。正当なタックルだったのではないか? その判定についてオリバー副委員長は「通常のスピードで見るといいタックルにも見えます。ただ、ボールに先に触っているようにも、触っていないようにも見えます。主審はとてもいい位置からこのプレーを見ていますし、この判定を批判すべきではないでしょう。PKだと判定した主審が正しかったと思います」と、今村主審の判定を尊重すべきだと強調した。
文:サカノワ編集グループ