【鹿島】伊藤翔が目覚めの一発!浦和&終盤戦のキーマンになる予感
浦和戦で久々のゴールを決めた鹿島の伊藤翔。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
執念でねじ込む! メルカリ社への株式譲渡の影響についても語る。
[J1 16節] 浦和 1-1 鹿島/2019年7月31日19:30/埼玉スタジアム2〇〇2
鹿島アントラーズのFW伊藤翔が浦和レッズ戦、土居聖真のクロスにジャンプヘッドからGK西川周作にボールを掻き出されながらもねじ込み、今シーズン5ゴール目を決めた。しかし、その後の88分に興梠慎三に決められ、試合は1-1で引き分けた。
その直前に伊藤がフリーでボールを収めながら、逆サイドに二人いる味方にパスを出さず強引にシュートを放って、チャンスを不意にしていた。そんなミスをすぐさま帳消しにするようなストライカーらしい一撃でもあった。
64分にレアンドロと代わり、伊藤がセンターフォワード、土居が右サイドハーフのポジションに入った。すると、前線が活性化され、相手にプレッシャーを与えていく。
迎えた77分、セルジーニョとのワンツーで右サイドを打開した土居がファーサイドへふわりと浮かしたクロスを放つ。橋岡大樹のマークをかわした伊藤がやや下がりながらも、高い打点でボールをしっかり捉える。そして西川がゴールネットを揺らす前にボールを掻き出したものの、副審と主審が「ゴール」と判定。鹿島に先制点をもたらした。
実に3月17日の4節・北海道コンサドーレ札幌戦(〇3-1)以来となる、4か月半ぶりのリーグ戦での一発となった。この時期にこの男に”当たり”が戻ってきたのは大きいだろう。
「(土居)聖真のセンスのお陰です。ここしかないというところにボールが来ました」
長所を引き出してくれた――。そんな土居の「センス」に、伊藤は感謝していた。
しかし88分の失点でドロー決着に終わり、「今年は最後に失点することが増えている。勝利と引き分けでは大きく異なる試合」と悔やんだ。
また、この試合前日にはメルカリ社が、鹿島の運営会社の筆頭株主になることが発表された。それを受けて、「選手に動揺のようなものはなかたか?」というメディアからの質問に伊藤は次のように答えた。
「会社側からの説明はありました。経営の話に、僕らは直接かかわっていませんが、もちろん僕らの成績によるという責任を担っていることは間違いありません。僕らはピッチに集中して、試合に勝つだけ。みんなそういう気持ちです。そこでの懐疑というのはまったくなかったです」
最前線に立つ男。伊藤がそのようにチームを代表するように語った。
リーグ戦は7試合負けなしだが、3連勝でストップ。ルヴァンカップの決勝トーナメント1回戦での対戦が決まり、ここからACL、天皇杯を含め最大であと6試合戦う可能性がある浦和との決着は、これからに委ねられた。
それだけに、伊藤がキーマンになる――。そんなインパクトをもたらした一戦でもあった。もちろん浦和戦のみならず。後半戦、開幕直後の時のように……いや、それ以上に、伊藤が牙を剥いてゴールを狙う。
[取材・文:塚越始]
text by Hajime TSUKAKOSHI