【Jの肖像】攻め上がれ!中島賢星の「アンカー」挑戦と大木武監督の狙い
FC岐阜の中島賢星 写真:後藤勝/(C)Masaru GOTO
新天地を求めたFC岐阜で、誰にも真似できないようなダイナミックなプレーを期待されて。
J2・8節の東京ヴェルディ対FC岐阜戦、目の覚めるような攻め上がりを見せたのが、75分に途中出場した岐阜の中島賢星だった。しかもアンカーで――。新天地では、その新たなポジションに挑んでいる。
「真ん中からずれないように」という大木武監督の指示のもと、守備をこなしながら中島が魅せる。85分、長い距離を一瞬で走り切り、スルーパスに合わせダイレクトで左足に合わせてシュートを放つ。惜しくもシュートはわずかに逸れたものの、0-0に終わる拮抗した展開のなか、その飛び出しは鮮烈なシーンとして観る者に刻まれた。
大木監督はその中島のプレーについて、「(試合終盤だったが、あと)『一本、あるぞ』という話をしていました。一発必中とはいかなかったですが、非常に良かったと思います」と賞賛した。
中島の持ち前であり、期待された『推進力』が生きた場面だった。
試合後、中島本人は次のように振り返っていた。
「アンカーのところから抜け出していくときは、自分の感覚を大切にしています。そこは自信を持っているところ。練習試合でも点を決めています。大木さんもそれを見たうえで指示を出してくれました。決めるだけでしたね、あれ(決定機)は」
ゴールに近いフォワードやトップ下ではなく、さらにボランチでもなく、最終ラインの前での起用。そこから中島の武器であるドリブルを生かすという起用法は、既成概念に捉われない大木監督らしい。
中島も新たな自分自身を発見できているという。
「これまでやることはなかったポジション。練習試合を重ねるごとに手応えを掴めてきています。今は非常にやりやすいと感じています」
攻撃だけでは、通用しない。その攻撃力を活かすためにも多くを習熟する必要性があると中島も悟っている。
「守備あっての攻撃。そこはプロになってからすごく苦労した部分でもあります。けれど、今までやってきた自信もあります。まずは守備からですね」
大木監督は守備と攻撃はつながっているという趣旨のことをよく言っている。その攻守一体となった誰にもできないようなダイナミックなプレーを、中島に期待していることが分かる。
中島はその後2試合連続でフル出場を果たしたあと、一時別メニュー調整に。その間に岐阜は久々のホームでの勝利や連勝を収めるなど勢いをつけており、中島にもチーム内でのポジション争いが待っている。
東福岡高校からプロになって、岐阜で4年目を迎える。21歳の中島賢星はその名のごとく、過去のシーズンにはなかった、星のような輝きを放とうとしている。
取材・文:後藤勝
text by Masaru GOTO