【FC岐阜】真夏のハイプレスは非効率? 上位進出へ直面する「壁=課題」を検証する
愛媛戦、先制点を奪った岐阜だったが……。写真:後藤勝/(C)Masaru GOTO
4連勝から一転…最近1分3敗で12位に後退。アラートが鳴っても落ち着け!
[J2 23節] 甲府 – 岐阜/2018年7月15日/中銀スタジアム
FC岐阜は7月8日のJ2・22節の愛媛FC戦、開始10分に先制しながら、後半の2失点で逆転負けを喫した。前半30分までは圧倒的に試合を支配していたものの、そこから愛媛に押し返された。
これでカマタマーレ讃岐に勝って4連勝を収めたあと、19節のゼルビア町田戦から1分3敗と勝てずにいる。8勝5分9敗と黒星が再び先行し、12位まで順位を落としてしまった。
次第にプレスが掛からなくなり、ロングボールを放り込まれて苦戦を強いられた。岐阜の大木武監督は「上から観ていたコーチも言っていたのですけれども、切り替えが遅い、と。簡単に(愛媛FCの)後ろが蹴ることができる状況を作ってしまっている、という話がありました。そのあたりで後手を踏んだ気がします」と語った。
暑さのなかで序盤から仕掛けるハイペースと疲労の蓄積が要因の一つに挙げられる。設計図を書くのは監督の仕事だが、ディテールまで仕上げるのは選手の仕事。ハイプレッシングを貫くのは難しく、試合運びの面で問題が感じられた。
そもそも岐阜は自滅しやすい表裏一体のサッカーを展開する。この愛媛戦の前半30分間のように、一方的に攻め続ける間に勝負を決め切らないと、その後、必然的に劣勢を強いられてしまう。
結果として、守備時に5-4-1となる愛媛に、FIFAワールドカップ(W杯)でベスト8に進んだロシアのごとくしぶとく守られ、メキシコのように狙った速攻からゴールを奪われた。
今シーズンの岐阜を象徴する一人であるセンターバックの竹田忠嗣が苦言を呈した。
「1点を取ってからですね。自分たちでどうゲームを進めていくか、90分をどうマネジメントしていくか。ピッチ状況や気温、湿度などいろいろ(考慮する条件が)あったなかで、少し幼稚だったというか」
先制した勢いで畳み掛けて相手をKOする。岐阜が目指すその意識を共有できていなかった。
「相手の気持ちをどう崩していくか。1点目の時点で残り80分くらいあり、まだまだ元気がある。僕らは何のためにボールを動かしているのかというと、ゴールを目指しているから。そこを忘れてしまうとやっぱり怖さがなくなってしまう。常に誰かがウラを狙っているから相手ディフェンスも怖いと感じる。そういうところを忘れないようにしたい。相手にいつもナイフを突きつけているような状況を作っていかないと」
逆に守勢に回ると落ち着かなくなり、拙い対処をしてしまったことへの言及もあった。
「コーナーキックを与えるクリアをしてしまったり、相手にこぼれたり。その判断も正しかったのか。緊急時のアラートが鳴ったときの落ち着きも必要かなと思います」
主導権を握っているときのみならず、試合全体を考える。緊急時の守備で、落ち着いて対応する。思い通りのサッカーができていないときこそ全員で意識を共有して耐える。そういった相手との駆け引きを、岐阜はまだできずにいる。観る者を楽しませるほどボールをしっかり回せるぐらいチームとしての巧さは上がっている。ただ、勝ち続ける――上位に行くためには、この「壁=課題」を乗り越えなければならない。
岐阜は15日、アウェーでヴァンフォーレ甲府と対戦する。
取材・文:後藤 勝
text by Masaru GOTO
著者プロフィール:FC東京を中心にサッカーからアニメ、ゲームなど幅広く手掛けるライター。FC岐阜も精力的に取材する。近著に「「クラシックゲーム a GO GO 熱かった1980年代からゲーム史を読み解く」。