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女子W杯へ秋田豊氏がなでしこジャパンに「闘魂ヘッド」伝授

ストライカーの横山久美に指導する秋田豊氏。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

強豪4か国の親善大会を控えた直前合宿で高倉監督の依頼を受け、空中戦の極意を教える。

 なでしこジャパン(日本女子代表)が2月27日からアメリカで開催される「She Believes Cup(シービリーブス カップ)」へ向けて、福島のJビレッジで直前合宿を行っている。

 フランスで6月に開催されるFIFA女子ワールドカップを控え、アメリカ(FIFAランキング1位)、イングランド(同4位)、ブラジル(同10位)という世界のトップレベルの代表チームと対決できる貴重な機会。今回はU-20世代や「なでしこチャレンジプロジェクト」からの新戦力候補も招集されている。

 その直前合宿で、高倉麻子監督が日本の弱点でもある空中戦を克服するために招聘したのが元日本代表の秋田豊氏だ。鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、京都サンガ、そして日本代表で最終ラインを支えた「ヘディングのスペシャリスト」が、なでしこジャパンにその極意を伝授した。

 前日のミーティングでしっかりイメージを伝えて臨んだトレーニング。「最高打点で勝負をする」、「ボールの当てどころを明確に」、「どのタイミングで相手の視野から消えるのか」など、秋田氏は攻守両面で丁寧に選手に伝えていく。

 男子大学生を相手にした実践トレーニングでは、明らかに対格差のある相手に対しても、体をしっかりと寄せていくなでしこの選手たち。相手を見ながらも最後までボールにアプローチすることを諦めないなど、さっそく効果は表れていた。また相手にシュートを打たれたとしても、体を当てることで枠外に飛ばせる駆け引きも身に付けていった。

 U-20女子ワールドカップ優勝メンバーのキャプテンを務めた南萌華(浦和レッズレディース)は次のように効果を実感していた。

「自分がこの位置かなと思ってジャンプしてたところではなくて、さらにもっと高くジャンプしたほうがいいと言われて、今日練習してみたんです。いつもより頭一個分高いところでヘディングができた感覚があったので、本当に発見になりました」

『秋田効果』は攻撃面でも顕著に表れた。クロスボールを上げていた阪口萌乃(アルビレックス新潟L)は次のように言っていた。

「クロスをどこに蹴ればいいのか、どこに欲しいのかが曖昧なところがあったりしました。でも今日はここに欲しいんだとハッキリと分かりました。たとえボールに触れなかったとしても、出し手と受け手のイメージが合ってきているのが分かりました」

 秋田氏は言う。

「ワールドカップで戦った時も、僕は18センチで相手は190センチ以上の選手がいて、決して勝てなかったわけではなかった。(ヘディングは)世界で勝つために必要なこと。なでしこの選手たちは技術的なレベルは非常に高いし、十分にやれる。苦手意識(相手に対する引け目)を持つ必要はないです」

 さらに名古屋時代の同僚でもあった本田圭佑を引き合いに出し、日本代表での経験も語る。

「本田や僕もそうですけど、そんなに能力が高いわけではありませんでした。でもそんな彼がワールドカップで得点をしている。だから、努力次第で、ここにいるみんなにチャンスがある。むしろもっともっと能力を持っているはず。結果を掴み取るのは自分次第です」

 世界を知る男がそのようにスピリットを注入していた。

 これまでなでしこジャパンは、選択肢の高い優先順位に空中戦を入れることを避けてきたのは事実だ。しかしこのトレーニングをきっかけに、空中戦に対する苦手意識が薄まればそれだけ可能性は広がる。選手たちも手応えを掴んでいる。この成果をぜひ「She Believes Cup」、そして女子ワールドカップにつなげてもらいたい。

大学生を加えての実践トレーニング。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
ピッチ脇にスクリーンを設置し、トレーニングは本格的に行われた。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA

Posted by 早草紀子

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