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女子W杯まで3か月。高倉監督が挙げたなでしこ「3つの課題」

今月のシービリーブスカップのイングランド戦に臨んだなでしこジャパンのイレブン。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

イングランドに0-3で敗れたが、「次は大丈夫」。

[シービリーブスカップ] 日本 0-3 イングランド/2019年3月5日/レイモンド・ジェイムス・スタジアム

 アメリカで開催された4か国対抗「She Believes Cup(シービリーブスカップ)」で日本女子代表(なでしこジャパン)は1勝1分1敗の3位で終えた。最終順位は1位イングランド、2位アメリカ、3位日本、4位ブラジル。

 日本は大会初日にアメリカに二度のリードを許しながらも、中島依美、籾木結花の得点で追いつく2-2の好ゲームを演じた。続くブラジル戦は、21歳の小林里歌子、籾木の2試合連続弾、長谷川唯といずれも日テレ・ベレーザ勢が決めて3-1の勝利。メンバーを大幅に入れ替えた最終イングランド戦は前半に3失点を喫し、0-3で敗れた。

 高倉監督はイングランド戦について、次のように振り返った。

「ウチは粘り強い守備がないとゲームになりません。(イングランドのような)パワーのある相手との試合で、粘り強さもスーパープレーもなく、集中力を欠いた失点が続いてしまった。私自身も優勝を強く思って、試合に入りましたが、プレーが軽かったです。一人ひとりの局面やチーム全体のところで、なんだか”抜けた”ようなゲームになってしまいました。

(失点が続いても選手交代しなかったが?)先発で送り出した以上、時間は必要ですし、どのように立て直していくのかというところも見ていました。もちろん交代で入った選手にとって、(3点を返すのは)難しい状況ではあったと思います」

 3失点の要因は、プレーの推測をしきれなかったこと。改めて欧米系のチームと対戦する時の難しさを実感させられた。

「局面の場面で選手たちは『大丈夫』と思って対応しています。そこで予想していないシュートエリアから打ってきたり、違うタイミングでクロスを放ってきたり。また、セットプレーで気が抜けていると決められてしまう。その1プレーへの意識が欠けていたと思います」

 後半はボールポゼッションで大幅に上回った。しかし、それは3点リードしたイングランドが守備を固めて、カウンターを狙ってきたためだ。

「裏返していくパワーを前半はなかなか出せなかったので思い切って選手を代えました。少しゴールに対する勢いは出たものの、結局ゴールを仕留められませんでした。そういった意味で、これまでの2試合、比較的やれていた部分が多かったなか、こういった負けを喫したことで、チームに現実的な危機感が残りました。大きな負けだと思います」

 そのように、この一敗から得るものも大きいと指揮官は前向きに捉えていた。一方、高倉監督は「選手の見極めとイングランドへの選手の対応をしっかり学べたので、次は大丈夫だと思います」という力強い言葉も残した。

「ボールを止める蹴る。そのリズムからタイミングを作り出すことに長けた選手が並ぶと、もちろん相手が引いていたこともありましたが、いつか仕留められるのではないかと感じました。何より粘り強い守備が大事。それを出すために、守備の強度を上げていきたいです」

 なでしこジャパンの収穫としては、苦しい状況下でも、効果的な攻撃を繰り出すことができていた点を挙げていた。

「自分たちがボールを持つ時間は短くても、ギアが入った時、ゴールを陥れる形は見られました。イングランド戦はボールを持っていても点が入りませんでしたが。それがサッカーの難しでもあります。ポゼッション時にはイングランド戦の後半ぐらい動いて、チェンジした後(選手交代後)のパワーはもう少し必要ですけれど、自分たちが狙っている流れはできました」

 今大会はU-20ワールドカップ優勝メンバーとの融合も進められた。アタッカー陣(スーパーサブ的存在)は一気に若返る可能性も感じられる。

「世界一を目指すところで通用する選手かというところで、厳しい判断を下さないといけません。フランス遠征(3月下旬から4月上旬、フランス、ドイツと対戦)でも一つ、二つ試したいことがあるので、ある程度、メンバーを選びながら、優勝を狙う2チームとの対戦で、欠けているピースと軸になるものを固めていくつもりです」

 高倉監督の話をまとめると、▽守備面では欧米系の「一発」でゴールを簡単に仕留めてくる怖さを改めて体感できたこと▽攻撃面では苦しい状況下でも”ギア”が入れば連動性溢れるアタックからフィニッシュまで持ち込めたこと▽チームとしては選手の見極めが進みU-20W杯優勝メンバーも加わってきたこと――そのあたりが、今大会の収穫に挙げられそうだ。

 3月から4月のフランス遠征では、熊谷紗希ら欧州組、そして国内の中心選手も加わり、チーム作りも仕上げの段階に突入していく。「まだ試したい」と指揮官が言っているあたり、まだ迷いがあるのだろうか? もちろん、一方で多くの有望選手が出入るすることでチーム内の争いが常に活性化されてきた点はメリットに挙げられる(過去に形骸化もあっただけに)。とはいえ、W杯初戦のアルゼンチン戦(6月10日)まで約3か月、逆算して骨格作りから肉付けへと進めていきたいところだ。

取材協力:早草紀子 

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