”温かく”燃えたベレーザとINACの天王山。大成功を収めた籾木結花の仕掛けとは?
ベレーザの10番、籾木結花がピッチ内外で大活躍!写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
勝点5差の1・2位対決。浸透進むベレーザの新スタイルに、INACは現実的に対応。
なでしこリーグの2018シーズンはいよいよフィナーレが近づき、10月20日の16節では、首位の日テレ・ベレーザと2位につけるINAC神戸レオネッサの直接対決が行なわれ、スコアレスドローで引き分けた。
残り3節、勝点5差で迎えた直接対決。勝って2連覇を決めたいベレーザと、逆転優勝に望みをつなげたいINAC。両者の意地が随所で激突した90分間だった。
今季のベレーザはポジショニングから展開まで、自身と味方の様々な情報を読み解き、瞬時に落とし込むスタイルに取り組んできた。シーズン序盤は技巧派揃いのベレーザの選手たちに戸惑いも見られたが、永田雅人監督の意図が浸透した終盤、一戦ごとに組織として狙いの選択肢が確実に増えるなど成長を感じさせた。
そんなベレーザの勢いを、INACの守備が吸収する。こだわったのはDFラインを下げすぎないこと。一昨年前までベレーザのコーチを務めたとあって、ベレーザのパスレベルなどを勘案した鈴木俊監督が導き出した現実的な戦術は、勝機の探り方が明白だった。そこに今シーズン高めてきた粘りの守備が効いた。
リズミカルにボールをつなぐベレーザの展開でも、スイッチが入ってから2タッチまでで遮断。フィニッシャーに渡る3つ目のボールに迷わず鋭く奪いに行く守備は、最後までベレーザを苦しめた。
見応えあるスコアレスドローだった。最後まで粘りを見せたINACにも、優勝が持ち越しとなったベレーザにも、この一戦から得たいろいろな収穫があったはずだった。
また、この一戦に向けて、ベレーザは新たな斬新な試みも実施した。1か月前から籾木結花がプロデューサーを務め、当日の企画やイベントはもちろん、グッズデザインに至るまで“選手発信”で5000人を目標に来場を呼び掛けてきた。その甲斐あって味の素フィールド西が丘には4600人を超す観客が訪れた。
選手の想いはファン・サポーターにも伝わった。生み出された熱量は入場時にチームカラーであるグリーンストライプのコレオとなって選手たちを迎え入れた。
「“ホーム”なんだということをすごく感じました」
籾木は喜びを噛み締めた。大変な労力だったはずだが、それも含めて丸ごと楽しんでいるように見えた。
こうした選手とファンの近しい距離感も女子サッカーの魅力の一つに挙げられる。この日集った一人ひとりによって作り上げられた最高の舞台だった。
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA