【なでしこジャパン】藤野あおばらに蒔かれた「自信」という種。ニールセン前監督が残した功績
ニールセン監督が残した功績。それを伸ばすことも、再び世界一を目指すためには重要になる。写真:早草紀子(C)Noriko HAYAKUSA
電撃退任の背景とともに
アジアの頂点に立った日から、わずか12日後のことだった。なでしこジャパン(日本女子代表)に女子アジアカップのタイトルをもたらしたニルス・ニールセン監督が退任するという異例の事態が起きた。
この電撃退任は大きな驚きをもって受け止められたが、現場を取材してきた立場からすれば、決して唐突なものではなかった。
なぜ、結果を残した指揮官が去るのか――。
日本サッカー協会(JFA)の佐々木則夫女子ナショナルチームダイレクターが記者会見で口にした「緩い」という言葉が独り歩きしている。しかし本質はそこではない。JFAが求めた強化の方向性と、ニールセン監督が進めてきたチーム作りとの間に生じていたギャップこそが、この結末を招いた最大の要因だった。
なでしこジャパン初の外国籍監督として招聘されたニールセン監督には、日本が築いてきた土台に“世界の視点”を持ち込み、その上で結果を再現できる戦い方を落とし込むことが求められていた。実際にアジアカップ優勝という結果は残したが、強豪国相手にも同様の形で試合をコントロールし、勝ち切るスタイルを定着させるには至らなかった。
就任直後のSheBelieves Cup優勝は、大きな成果だった。しかしその後の強豪国との対戦では、競り合いを勝ち切れず、主導権を握れない試合が続いた。コロンビアと引き分け、ブラジルに連敗。熊谷紗希が口にした「勝ちきれない勝負弱さ」は、チームの課題として残り、それこそが協会が改善を求めていたポイントでもあった。
そのズレが明確に表れたのが、6月のスペイン戦だった。
ニールセン監督はポゼッションで対抗する姿勢を打ち出したが、結果はシュート数2本対20本で完敗を喫した。理想と現実の差が、そのままスコア内容に反映された一戦だった。
さらに東アジアE-1選手権は3位に終わり、どのような展開でも勝ち切るための形が見えてこなかった。国内組主体だったとはいえ、タイトルが求められる大会で結果を残せなかったことも、評価を厳しくした要因となった。
それでも、重要な局面で結果を残したのは事実だ。
アジアカップ決勝では、7万人の大観衆を背にしたオーストラリアの猛攻を耐え抜き、これまでにない粘り強さで勝利した。皮肉にも、それは体制下で初めて示した、強豪相手に勝ち切る形でもあった。
ただし、強豪国との対戦機会が限られる中で評価を固めなければならなかった点は不運だったと言える。
とはいえ、道半ばでの退任となったが、ニールセン前監督の功績は小さくない。
就任当初、チームには自信のなさが漂っていた。ニールセン監督は「自信を持って挑もう」と語りかけ続け、選手たちのメンタルを立て直した。SheBelieves Cup優勝は、その変化を象徴する結果だった。
特に若手への影響は大きい。藤野あおば、浜野まいか、松窪真心らに積極的に声をかけ、迷いなくプレーする姿勢を促した。藤野が語った「シュートを外しても、その選択が重要だと言われた」という言葉は、その後のプレーに明確に表れている。
一部で指摘された言葉の壁は本質的な問題ではなく、コーチ陣との連携によって戦術理解を浸透させる体制は構築されていた。
今回の退任劇が示したのは、代表チームに求められる評価軸だ。
結果だけでなく、その内容が次につながる形になっているかどうか。強豪相手にも再現できる戦い方を示せているかどうか。その両方が問われた。
ニールセン監督が残したものがどのように引き継がれるのか。その答えは、これからのなでしこジャパンがピッチの上で示していくことになる。
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