「ショートスリーパー」「寝不足」何が違う? 医師が語る“個人の経験”と“医学”の違い

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「新しい説」を否定するのではなく――。

 短時間睡眠で日常生活を送る「ショートスリーパー」を巡る議論が、SNSやユーチューブで話題になっている。そうしたなか医師の井たくま氏がこのほど、自身のユーチューブチャンネル「ニート医師」で、この議論を医学的な視点から解説した。

 井氏はまず、現在の医学的な常識が「絶対に正しい」と考えているわけではないと説明する。

 医学の歴史では、それまで正しいと考えられていた説が、新たな研究によって覆されることもある。そのため、現在の医学とは異なる説についても、その可能性自体を否定するものではないという。

 ただし「可能性がある」ことと、それを医学の標準として多くの人に勧めることは別だと強調する。

 例えば「睡眠時間を短くしたら調子が良くなった」という個人の経験は、新しい仮説を生み出すきっかけになり得る。しかし、それを「他の人にも有効」と一般化するためには、十分な人数を対象にした客観的な研究や、長期間の追跡、再現性などが求められる。

 井氏は、医師の基本的なスタンスについて、新しい考えを最初から否定するのではなく、その説が正しいのであれば「質の高い研究で示してください」というものだと説明する。

 医師がエビデンスを重視する背景には、健康への影響がある。

 個人が「自分はこれで調子が良くなった」と話すことと、医師が医学的な裏付けがあるものとして広く推奨することでは意味が異なる。十分に検証されていない健康法を勧め、あとから有害な影響が判明すれば、それを実践した人の健康にも関わる。

 そのため医学では、現時点までに積み重ねられた研究をもとに、最も妥当と考えられる方法を採用する。そして新たな研究によって、それ以上に有効な方法が示されれば、医学的な考え方も変わっていくということだ。

 ショートスリーパーを巡る議論についても、「短時間睡眠でも問題なく生活できる」という個人の経験と、それを多くの人に適用できる方法として扱うことは分けて考える必要があると見る。

 井氏は今回、様々な主張を「正しい」「間違っている」と判定するのではなく、医師がなぜ新しい健康・医学上の説に対して慎重な姿勢を取るのかを説明した。

 睡眠時間を削っても大丈夫なのか、それとも単なる「寝不足」なのか――。様々な情報が飛び交うなか、少なくとも医学的には、個人の体験だけではなく、それを裏付ける客観的なデータが重要になるということだ。

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