浦和の主将柏木は「大誤審」のプレーへの影響否定。敗因は別のところに
誤審に揺れた一戦、試合再開へ主審から説明を受ける浦和の柏木陽介(左)と大野和成(右)。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
「ナバウト→ファブリシオ」交代後の戦い方を悔やむ。
[J1 12節] 浦和 2-3 湘南/2019年5月17日/埼玉スタジアム2〇〇2
湘南ベルマーレの杉岡大暉のシュートがゴールネットを揺らしたものの審判団に見逃された「世紀の大誤審」が起きた試合後、浦和レッズのキャプテン柏木陽介は、その問題のシーンとともに敗因について語った。
結果的にあの誤審がなければアンドリュー・ナバウトの負傷交代は回避できた。その意味では、大誤審が試合の流れをやはり変えてしまったと言えた。ただ、柏木はナバウトからファブリシオへの交代後、戦い方を状況に応じて変えるべきで「自分がコントロールできなかった」点を悔やんだ。
「立ち上がりは良かったです。今季一番と言えるぐらい。自分も体が動いてすごく走れて、右に入った(長澤)和輝がボールを持つことで、久しぶりの感覚でプレーできた。もっと良くなっていける感じを得られた」
その要因の一つが、マルティノスとアンドリュー・ナバウトを前線に並べた2トップの布陣が、「前からプレスに行く」というメッセージになっていたこと。全員で意志疎通を図り、同じく高い位置からのプレスを狙う湘南相手に先手を取り、しっかりハマった。
「守備はマルちゃんとアンドリューが出ることで『プレスをかけにいく』という狙いで、俺も前から行けていた。高い位置からボールを奪えて、ゴールにも直結できた。ただ……アンドリューのあの不運なケガによる交代のあと、自分がもうちょっとコントロールしないといけなかったな、と」
ナバウトのプレッシングの迫力と献身性はチーム随。一方、ケガから復帰し今季初出場となったファブリシオは、もちろん体力的な問題もあるが、基本的にはストライカータイプで、高い位置に置くことで相手に脅威を与え、一瞬の隙を逃さず得点を狙えるところが魅力。いずれも助っ人のFWではあるが、異なるタイプだ。
それまでハマっていた戦い方を、少し変えていくべきだった。少なくとも、あの杉岡のゴール――大誤審が起きたあとに。柏木は振り返る。
「ファブリ(ファブリシオ)が入った後、それまで機能していた前からのプレスがかからなくなったと分かったら、チームとしてブロックを作る時間を設けても良かった。結果的に、その分、無駄に前へ行って疲れてしまうオープンな展開になってしまった」
普段試合に出ていなかったメンバー中心の構成だったが、浦和は立ち上がり30分間、前線からのプレスがハマり、湘南を圧倒していた。その残像がむしろ強く残り、結果、劣勢を強いられている間に戦い方を切り替えられなかったことを悔やんだ。
「ホームで試合に出ていなかった選手が、前向きに結果を出したいという、その気持ちがすごく伝わってきたから、それを生かしてあげたい気持ちがすごく強かった」
「ただ、相手が割り切ってボールを蹴ってきたところで、リズムを崩し、プレスも掛からなくなってしまった」
そして大誤審がプレーに影響を与えたか? 柏木はその点を否定した。
「正直、あのような時にどうしたらいいのか、正解が分からない。ゴールだと言ってあげても、それがこの状況的に正しいのか。選手側からはコメントしづらい。(誤審による7分間の中断。プレーに影響があったか?)それに関しては、自分は思っていない。もちろん、申し訳ないような気持ちがどこかにあった。明らかに、周ちゃんも『次に行こう』と言って投げたボールが、プレー続行になって。ただ実際に何が起きたか分からず、なんとも言えなかった」
何より柏木は、試合の「流れ」を読み切れなかったことに責任を感じていた。
試合内容と誤審はまた別問題。一方で、ゴールラインテクノロジーの導入は必須だとも強調していた。
「ゴールが入ったか入らなかったかのシステムは導入べきではないか。PKかどうかなどファウルの判断が主審によって変わってくるのは理解できる。ただ、ゴールが入ったか、入らなかったかは客観的に分かること。試合中、そこは俺らからはなんとも言えないところだから、システムは導入すべきだと思う」
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI