【横浜FM×浦和】原因は「運営」の得点者情報。結果「誤審」のゴールを認定する形に
横浜FMのアンジェ・ポステコグルー監督(左)、浦和の大槻毅監督(右)。(C)SAKANOWA
宇賀神のオウンゴールではないかと、主審と副審で判断。
[J1 19節] 横浜FM 3-1 浦和/2019年7月13日/日産スタジアム
明らかなオフサイドだったはずだが……「ゴール→オフサイド→やっぱりゴール」。横浜F・マリノス対浦和レッズの59分に起きたオフサイド見逃しによる二転三転した誤審騒動は、「運営側」からの得点者の情報が原因だったことが明らかになった。問題のシーンが「Jリーグジャッジリプレー」で取り上げられ、JFA(日本サッカー協会)の上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャーが詳しく解説をした。
横浜F・マリノス対浦和レッズの一戦、横浜FMが1-0とリードして迎えた59分に、左サイドを突き破った遠藤渓太がシュートを放つ。これがシュート性のクロスとなって、逆サイドから駆け上がった仲川輝人と競り合う宇賀神友弥のところに飛び、仲川が胸で押し込んだ。
VTRで振り返ると明らかなオフサイドだったが、松尾一主審は副審と協議したあとゴールと判定。しかし、その後、さらに副審や第4の審判とやりとりするなかで、一旦、オフサイドに判定を覆した。が、再度抗議を受けて、結局、横浜FMのゴールだと認定してプレーが再開された。
上川氏はまずオフサイドの判定が難しかったことを説明した。
「副審は仲川選手がオフサイドポジションにいることはしっかり認識していました。そこで2点が考えられます。まず、仲川選手がボールにプレーしたのかどうか。プレーしたのであれば明らかにオフサイドです。または、仲川選手のオフサイドであれば、一方で宇賀神選手のプレーを妨げるようなことをしたのかどうか。この2点が考えられることでした」
そこで、ゴールネットを揺らしたあと、主審と副審が情報を共有しあった。
「仲川選手が宇賀神選手に何かしらインパクトを与えていたのか。というところで、副審は『ない』と判断しています。ボールに対して足を上げていた『宇賀神選手のオウンゴールという印象が強い』と判断しました」
すなわち、主審と副審は、「仲川選手のオフサイドと確証を持てなくなった。はっきりわからないため、得点をまず認めました」(上川氏)。
つまり主審も副審も、仲川か、宇賀神か、どちらが触ったかを確認できなかった。どちらかというと、宇賀神ではないか、という判断だった。
そのポジショニングについて上川氏は「主審がもう少し、左へ広がっていれば、より確認できたのではないでしょうか」と指摘。ただ、遠藤のシュートがクロスになって逆サイドから押し込む――というプレーを予測することは難しかったと慮った。
しかし、そのあと、一旦、オフサイドに判定が覆った。その背景について、上川氏は説明した。
「得点のあと、誰が得点を決めたのか、記録と運営が確認しています。それを手前の副審と第4の審判が、(インカムで)主審と最後の確認をしているわけです。ポイントは仲川選手が触れたかどうか。得点者が誰か聞くところで、マリノスの運営担当者が『23番の仲川選手です』とレフェリーに伝えたのです。主審はその情報を得たことで、オフサイドの判定になりました」
つまり、「運営」から第4の審判が得た情報によって、オフサイドに変わったということだ。
上川氏は次のように説明する。
「ただし、(メインスタンド側の)副審のほうから、そこから情報をもらって判断したのであればダメではないかと指摘を受けます。競技規則では審判団4人の能力を最大限に生かすことになっています。二次情報をもとに判断したのであれば問題である。そこで最初の判定に戻されました。
そこで両監督を呼んで、『私たちの持っている情報ではゴール。オフサイドにしたのは、運営から聞いた情報だった。そのため最初のゴールを認めます』と伝えました。あくまでも審判団の『目』だけでしか認めないといけません。そこに第三者の介入が認められているのはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)だけです」
そこで上川氏は「もっと早く情報共有して、素早くキックオフすべきだったと思います。最初の情報共有が大切になります」と解説した。つまり、審判の目では限界があり、「誤審」を甘んじて受け止め、試合を再開すべきだった――ということだった。
つまり、「公式記録」の得点者はVTRなどを見て確認する。しかし、そういったことを含めて何かしら入ってきた情報でさえ、判定から”排除”しなければいけない。そんな審判団にとって少なからず理不尽な状況もより明らかになった。
ただ何より、ルールが非常に複雑化しているとはいえ、このレベルのオフサイドが見逃されるのは、審判団として問題だったのではないか。しかも、3点目のハンドも「誤審」だったことが明確になった。そのあたりも「仕方ない」で済まさず、よりJFA審判部で検証してもらいたい。
関連記事:【Jの輪】藤本淳吾、中村俊輔…天野純の「左足」を育んだ”極上”の練習環境
[文:サカノワ編集グループ]