俺たちは尖ったチーム――完敗から2週間、湘南が見違えるような強さを取り戻した背景
サポーターと歓喜する湘南の梅崎司(左)と野田隆之介(15番)。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
梅崎司は明かす「一度、全員で意識の針を振り切った」。
[J1 20節] 札幌 – 湘南/2019年7月20日13:00/札幌ドーム
湘南ベルマーレが7月14日のホームでのJ1リーグ19節のヴィッセル神戸戦、3-1の逆転勝ちを収めた。湘南は5連敗のあと2連勝。ホームでは実に3月17日の4節・ベガルタ仙台戦(〇2-1)以来、約3か月ぶりとなる勝利を収めた。
前半は数多くの決定機を作りながら、アンドレス・イニエスタのロングフィードから古橋亨梧に決めら先制点を与えた。ただハーフタイム、ドレッシングルームで梅崎は「大丈夫だ」と、チームメイトに声を掛けたという。
「意気消沈しているところもあったので、『変わらず続けていこう』と伝えました。曺さん(曺貴裁監督)も『相手は必ずバテるから』と言っていて、それでネガティブにならず後半開始から試合に入れました。それは大きかったと思います」
すると後半も湘南は攻め貫き、山﨑凌吾、杉岡大暉、フレイレと、豪快に3ゴールを奪ってみせた。
Shonan BMWスタジアムでは2週間前の6月30日、セレッソ大阪戦に0-2で敗れていた。ボールをキープして回せてはいるが、攻撃のテンポがなかなか上がらない。全員のベクトルがゴールに向かえていない。そんな印象を抱かせた。
この2週間、一番力を入れて取り組んできたことはなんだったのか――。
その問いに梅崎司はこう答えた。
「自分たちのスタイルを再確認して、それをやるために全てを注ぎ込む準備をしてきました。意識のところもそうです。僕たちは尖っているチーム。すべてのアベレージが高いわけではない。そんなに強いわけでもない。けれども、他のチームにはない秀でているものも持っています。それがあるからこそ、それを出してきたからこそ、ここまで来れました。そこを一番大事にして行こうと」
そして、改めてチームとしてのバロメーターで「意識の針を振り切った」という。
「今日(神戸)は上手い選手たちばかりでしたけれど、変わらず自分たちの戦い方で壊していくことを心掛けました。その姿勢を取り戻せた。(連敗を経て)チーム全体として、意識の針をそこへ思いきり振り切ったところから始めました。日々僕らが鍛錬してきているところへ。それは他のチームにはできないことですから」
湘南にしかできないこと。その武器を最大限に発揮するところへ、全員で目を向けたという。
「だから、どのチームも真似できないところを構築していくことが大事だと思います。そこにプラスアルファで技術的、戦術的な幅を広げていきたい」
単なる、スタイルを貫こう、と気持ちだけをリセットしたわけではない。より具体的に、「僕らは守備も攻撃的な姿勢から始まる」(梅崎)という”起点”に立って、細部までスカウティングし、それをピッチに落とし込んだ。
齊藤未月は次のように明かしていた。
「(神戸は)クロスに対してあまりいい対応ができていないな、と感じていて、そこを突いていきゴールにつながりました。全部が上手くいったわけではないけれど、ベースのところは出せてきていると思います。(スカウティングでは)CBではなく、GKから蹴ってくるのではないかという話が出ていました。そこでフレイレをはじめ最終ラインの選手がウェリントンやビジャに強くハードに行けて、前の選手がセカンドボールを拾う回数も増えました」
最前線の山﨑凌吾から迷わず最初の守備=プレスが発動。相手のCBのみならず、GKまでプレスをかけて自由に蹴らせなかった。そうすることでラインを高めに設定できて、セカンドボールの回収にもつなげられたというのだ。
もちろん今後、「湘南対策」を立ててきたチームへの対処法など課題はある。ただ、選手個々は立ち上がりから全力を発揮し、チーム全体としては90分間で全力を出し切る――そんな湘南スタイルの「強度」が高まってきたことを感じさせる勝利にもなった。
明日20日は、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもと、明確なスタイルを持つ北海道コンサドーレ札幌とアウェーで対戦する。走り切ったほうが勝利を掴む、見応えのある一戦になりそうだ。
関連記事:「緊張よりワクワク」湘南の星、齊藤未月が自身初の開幕戦出場を勝利で飾る
[取材・文:塚越始]
text by Hajime TSUKAKOSHI