【インタビュー】西大伍/鹿島「SBを続けたのはW杯に出たかったから」
自分の言葉を持つ西大伍。現在の率直な想いを語ってくれた。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
日本代表への想い、ポジションへのこだわりについて――。
ワールドカップの中断期間を経て再開したJリーグ、鹿島アントラーズが2勝1分と好調だ。ケガも完全に癒えた西大伍は主戦場のサイドバックに加え、天皇杯ではセンターバック、リーグ戦では右サイドバックでもフル稼働している。「Jの輪」にも登場してもらった西に、シーズン再開後、鹿島の巻き返しへのポイントを語ってもらった。そのなかで西が明かした日本代表への想い、そしてポジションへのこだわりとは――。
――今季のJリーグ前半戦の話題の一つに、同じ右サイドバックを主戦場にする内田篤人選手の鹿島への復帰がありました。ただ一方で、何より西選手の活躍なくして、鹿島は好成績を収められないとも思っていましたが?
「内田選手がやってくれるのが一番いい。サイドバックはもちろん重要ですけれど、僕は別のポジションもやってみたかった。もっとチーム全体に関われたらな、と思うところはありましたので」
――ポジションは、どこでもいいと?
「例えば、僕がチームに3人いれば、チームは楽だろうなって、本当にそう思っています。これが活字になると、何を言ってんだコイツと思われますけど、実際そう感じてきました」
――いえ、西選手らしいです。逆に、ポジションにはこだわりたいということですか?
「望まないポジションでプレーすることは、僕はあまり良いことだと思わないので、そういう時には、正直に言うようにしています」
――なるほど。それはそれで言葉にすることで責任を伴うわけですね。サイドバックは?
「サイドバックは、ワールドカップに行きたいので、やりますと言ってきました。でも、行けなかったので……。これからどうしようかなという状況です(苦笑)」
――そうなんですか!? もしかすると現在、大切な分岐点を迎えているかもしれない?
「基本はサイドバックだと思います。ただ自分の可能性をなくしたくはない(7月11日の天皇杯・町田戦はCBで出場、15日のJ1・柏戦では途中から右MFでプレー)」
――結局、日本代表はサイドの選手層の薄さが課題のままでした。西選手は昨年12月のE-1東アジア選手権の日本代表に選ばれましたが、負傷により辞退を余儀なくされました。結果的にその後も、西選手がいたら面白かったな……と思う試合が続きました。
「状態としては『行ける』と思っていて、(日本代表に選出されなかったのは)それも実力だと受け止めています。もしもハリルホジッチさんが監督を続けていたら、チャンスがあったかもしれません。でも結果的にハリルとは話したことはありましたが、彼のもとでプレーしたことはなかったので、今となっては何とも言えないところではあります」
――今季これまでの鹿島ですが、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)はベスト16に進みましたが、リーグは7位。西選手のケガによる欠場が響いたとも思いますが、もどかしさなどはありましたか?
「まぁ後半戦も再開して、ここからですよ」
――例えばケガをしたことで、体調管理などで見つめ直したり、新たに取り組んだりしていることは?
「時間の過ごし方やコンディション作りは、毎年少しずつ変えているというか、同じことはやらないようにしています。だから、ケガは別に関係ありません。いいシーズンを過ごせても、そこに固執せず、体も変わっていくので同じことをしていてはダメだと思っています。常に実験しています。いろいろと」
――”考える天才肌“の西選手は、鹿島のブラジル人選手との感覚的な相性が良さそうですが?
「彼らが真面目にやっているときの波長は合いますね。いや、でも国籍はあまり関係ないかな? 普段仲がいい必要はないけど、ピッチで感覚が合うと、そこで楽しさを感じられる。それがサッカーの面白さですから」
――シーズン再開後、どのような目標を設定しています?
「『結果』はあとからついてくるもの。自分が成長するために日々を過ごして、それがチームのためにつながると思っています」
――チームが変化を必要とする状況下、西選手が何か取り組んでいきたいと思うことは?
「うーん。個人的には、そんなに何かを変える必要はないと感じています」
――そんな西選手をはじめとした強い「個」が勝利を求めて結集するのが鹿島の強みであり伝統だと感じます。
「ピッチ内で結果を出すための準備を、どれだけできるか。鹿島はそこを追求しています。その本気度で言えば、他チームの『優勝を目標にしています』と言うのと、僕らが言葉にするのとでは本気の度合いが違うと思ってきました。ただ一方で、『鹿島だから勝てる』とは思っていません。やはり、まず自分自身がどうするか。そこに懸かってくると自覚してやっていきます」
◇特選インタビューPHOTO◇◇
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI