松本人志さん訴訟取り下げ、文春側が抱えていたリスクとは? 舞台裏の駆け引きを北村弁護士が解説
松本人志さん。(Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)
ユーチューブチャンネルで詳しく、双方の立場から説明。松本さんの”負け”という意見には「訴訟はそんな簡単ではありません」とピシャリ!
性加害疑惑の虚偽報道をしたとして週刊誌などに慰謝料を求めたタレントであるダウンタウンの松本人志さんの民事裁判は双方合意のうえ、訴訟が取り下げられた。弁護士の北村晴男氏は11月29日、ユーチューブ『弁護士 北村晴男ちゃんねる』で「【松本人志vs週刊文春】双方のコメントから読み解く『訴訟取り下げ』の理由はコレだ!」と題した動画をアップ。法律の専門家の視点から、改めて今回の訴訟取り下げについて、裁判を続けていた場合、それぞれに生じていたメリットとデメリットについて解説している。
北村氏は週刊文春側もリスクを抱えていたことを強調。今回の「取り下げ」につながったと、舞台裏の駆け引きがあったのではないかと見ている。
「『供述と供述の信用性だけを争う裁判になる』と初期段階で明らかになったのでしょう。ここで双方の利害が一致したと思われるのは、それぞれの代理人弁護士がリスクを感じていたところです」
客観的な証拠がないなか、どちらに転ぶか分からない。尋問しなければ、どうなるか分からない状況だったという。裁判を続ければ、さらに双方の傷が深まってしまう、迷惑をかける人も増えてしまうという展開もあり得た。
そして文春側のリスクとして、証人尋問に突然被害を訴えていた女性本人が来ない、尋問できたとしても時間が経過しているため不利になる発言をポロっと言ってしまう可能性も否定できない。さらには、証言によっては、裁判官から週刊誌の内容がかなり盛っていたという指摘を受けかねない。
北村氏はあくまでも「リスクがあるからと言って、負けるわけではありません」と強調しているが、そのように文春側にも先が読めない不安要素がいくつかあったという。
もちろん松本さん側は、同意・不同意に関して客観的証拠がなければ不利な立場でもある。そこを裁判で明らかにしていく意図だったが、証拠を明示する他には、女性が翻意する、あるいは実は同意的なことがあったという発言に賭けなければいけなかった。
そして裁判で徹底的に争うことになれば、3-5年はかかってしまう。現在活動を休止している松本さんと契約を結ぶ吉本興業側からすると、「早く収束しようという強い意思が働いたと思われます」(北村氏)ということで、三者の一番の思惑である”早期終結”へ基本的に合意し、訴訟取り下げに至ったという。
なお「和解」するためには、基本的に金銭が発生するということだ。そのため、女性側からの条件として、謝罪の言葉を求められ、松本さんのあのコメントが発表されたそうだ。
松本さんのやや歯切れの悪いとも受け止められるコメントについて、北村氏は「あくまでも自分のやった行為が、違法・犯罪だったり、同意がなかったりというものでは一切ないと考えています、というのを前提にしたお詫びです。おそらく双方ギリギリで調整できた内容だと思います」と解説していた。
また『訴訟取り下げは(松本さんが)負けた同然』という意見について、北村氏は「訴訟はそんな簡単なものではありません」として、双方の利害が一致しての決着だったと説明していた。
「文春側には立証責任という訴訟の大原則があり、裁判官に記事の内容を立証しなければならず、相当の理由があったと立証できなければ負けます。そういった訴訟上の原則がありました」
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結果的には松本さんが受けたダメージがあまりにも大きかった。この問題は、これで完全に終わりを迎えるのだろうか。