旧ジャニーズ性被害470億円訴訟、米国での勝算は!? 弁護士の北村晴男氏が解説、「腐ったメディア」と報道にも喝!
SMILE-UP.社の代表取締役社長を務める東山紀之氏。(Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images)
日米それぞれの法律の課題を丁寧に説明。今回の訴訟について「私は正直、いいことだと思っています」と評価する。
旧ジャニーズ・ジュニアの二人がこのほど、過去10代の頃に滞在していたアメリカのネバダ州ラスベガスで、故・ジャニー喜多川氏による性的暴行により身体的、精神的な被害を受けたとして、同州でSMILE-UP.社などに対し3億ドル(約470億円)を求める訴訟を起こした。
この件について、弁護士の北村晴男氏が12月28日、ユーチューブチャンネル『弁護士 北村晴男ちゃんねる』で、動画「【旧ジャニーズ性被害】元Jr.が米国で470億円提訴 なぜアメリカで…その意味とは?」を公開。性的被害に関するアメリカと日本の法律の違いや課題、訴訟の展望などを、専門家の視点から詳しく解説している。
日本での損害賠償請求は、被害者が損害・加害者を知った時から3年で時効を迎える。また不法行為から20年経過すると、除斥期間経過としての時効も成立する。
今回被害を訴えているのは、一人が1997年、もう一人が2002年のラスベガス滞在時だという。日本ならば裁判所が「法律には書かれていない特別な法解釈を裁判所がしない限り、時効は成立してしまう」ということだ。
一方、ネバダ州は18歳未満の性被害に関して時効がなく、「いつでも請求できる、という法律の規定になっているようです」(北村氏)。
すなわち少年・少女の性被害が、他の事案と同じ時効として扱われるのは「日本の法制度は不備」と指摘する。幼少の時に話せなかった問題について、大人になって事実が分かりしっかり対峙する。そういったケースは一般的に十分あり得るわけで、「青少年の特殊性に応じた法制度を日本でも作るべき」「青少年への特殊な法律を持つネバダ州は一定の評価をしていいと思います」と主張している。
一方、突然訴えられた時の反論・反証が難しいために「時効」はある。北村氏も「100パーセントの制度はない」として、時効がある必然性もまた強調している。
二氏の訴訟の相手は、藤島ジュリー氏ら旧ジャニーズ事務所幹部、被害者補償のために設立され東山紀之氏が代表取締役社長を務めるSMILE-UP.社、さらにタレントのマネジメントを行うための新会社であるSTARTO ENTERTAINMENTの三者である。
日本ではこの額の損害賠償請求であれば手数料(印紙代)だけで5300万円を超えるそうだ。しかしアメリカではそこまで手数料はかからないと見られ、弁護士が成功報酬型で引き受けてくれれば比較的高額な訴訟を起こすことも可能だという。
そしてアメリカでは民事でも陪審員制度の州が多い。日本では職業裁判官が裁き、これまでの基準から額も決まってくるため、巨額になることはあり得ない。ただ米国では、例えば大企業などを相手に感情的になって高額な判決が出ることがあり、これについて北村氏は「アメリカの司法の重大な欠点だと思います」と見ていた。とはいえ日本の慰謝料は低すぎるとも言及している。
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北村氏は今回の訴訟について「私は正直、いいことだと思っています」と評価する。故・ジャニー喜多川氏の性加害について報じた記事について、2003年・2004年に裁判で「事実」と認定されたものの、どのメディアもそのことを報じなかった。「腐ったメディア。いまだに一切反省していない。その反省を呼び起こすのではないでしょうか」と、もしかすると改めて国際的に発展するかもしれない問題・テーマであり、推移を見守っていく構えだ。