【ルヴァン杯優勝】トラッキングデータが物語る貫かれた湘南スタイル
杉岡大暉(左)と秋野央樹。(右)。湘南が走り勝った(写真はリーグ戦より)。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
走行距離、スプリント数とも湘南が上回る。
[ルヴァンカップ 決勝] 湘南 1-0 横浜FM/2018年10月27日/埼玉スタジアム2002
湘南ベルマーレが初優勝を成し遂げたルヴァンカップ決勝、両チームのトラッキングデータからも、勝敗を分けた明暗が浮かび上がってくる。今季リーグ戦でも上位のデータを弾き出していた両チームなだけに、試合前、選手からも「走り合いになる」という言葉が聞かれていたが、湘南がその点でも優勝チームにふさわしい”走り”を見せた。
ボール支配率は、湘南35パーセント対横浜F・マリノス65パーセント。湘南が前半36分に先制点を奪い、後半途中からは基本的にブロックを固めて、ボールを奪えれば繰り出すスタイルを取ったため、このようなやや偏った数値になった。シュート数は湘南12本:横浜FM15本、CKは湘南2本:横浜FM9本、FKは湘南11本:横浜FM17本。
今季の横浜FMは先制されると分が悪く、その後の挽回の仕方に課題を抱えてきた。その「悪い癖」が、この大一番で出てしまったと言えた。
では、トラッキングデータを見てみよう。
走行距離は湘南が113.077キロ、横浜FMが109.586キロ。
スプリント回数は湘南が184回、横浜FMが167回。
いずれも湘南が上回った。
大会は異なるものの、J1リーグ今季30節(湘南は29試合消化)までの平均データは次の通り。
総走行距離は湘南が115.9キロ(リーグ1位)、横浜FMが115.3キロ(同2位)。
スプリント回数は湘南、横浜FMともに176回(リーグ2位タイ/1位はFC東京の178回)。
その平均とこの決勝を比較すると、走行距離では、湘南は平均に近い数字を記録し、一方、横浜FMは攻め続けていたとはいえ、平均を6キロ近く下回っている。
走行距離に関しては、「走らされる」キロ数も記録されるため、あくまでも参考と考えるべきとも言える。ただ、横浜FMとしては、一人500メートル(ピッチ5往復分)も足りなかったのは何とも心残りと言えるか。リズムが単調になってしまったことも物語っている。
一方、スプリント回数では、湘南が今季平均を上回った一方、横浜FMは下回っている。前半の主導権争いのなか、湘南が躍動感溢れるサッカーを展開。その流れに乗って、結果的にデータ上でも”走り勝った”ことを実証した。
湘南が横浜FMにトラッキングデータ上でも走り勝ち、そして試合にも勝った。試合前、湘南の曺貴裁監督は「決勝だからと言っていい服を着るのではなく、普段着のサッカーをする」と言っていたが、まさに湘南スタイルを貫き、辿り着いたルヴァンカップ初優勝。まさに全員一丸となって走り切り、美しく輝く聖杯を手に入れた。
文:サカノワ編集グループ