今季の気になる光景。浦和レッズ「ハーフタイムダッシュ」の真実
浦和レッズの柏木陽介。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
前半終了と同時に一斉にサブの選手が全力で駆け出す。李忠成によると…。
[J1 32節] 札幌 – 浦和/2018年11月10日/札幌ドーム
浦和レッズの試合を観戦していて、気付いている人は多いはずだ。
今季の公式戦で前半終了を告げる主審の笛が吹かれたその瞬間、浦和の控え選手がまさにそれを号砲とばかりにタッチラインから一斉にダッシュでピッチに駆け込み、ウォームアップを開始する光景だ。浦和のある意味名物と言えるハーフタイムダッシュだ。
李忠成、菊池大介、森脇良太、ルーキーの柴戸海や荻原拓也、ときには阿部勇樹も……。ときに競い合うように、全速力で繰り出す。そして一気に高いテンションで体に刺激を与えてメニューをこなすと、ロッカールームに移動する。
森脇によると、このように、まずダッシュから入るようになったのは昨季終盤からだという。そして今季途中のオズワルド・オリヴェイラ監督の就任に伴い、その”ダッシュ強度”が上がったのだという。
というのも、オリヴェイラ監督は控えの選手たちにも、ハーフタイムのロッカールームでのミーティングに参加することを求めるようになった。そのため、選手たちは前半終了の笛が鳴ったあとの一瞬も無駄にせず、すぐ体に負荷をかけて体を一度温め、ミーティングに臨んでいるのだという。今季トップチームに昇格した新人の荻原としては、「それが当たり前となって、僕らは取り組んでいる」と言う。
しかも、ときどき、競走するように走り合っているようにも見える。そのあたりについて、最も熱く走っている李が真相を明かしてくれた。
「(誰にも負けないように走っているようでは?)それは僕が勝手に始めただけです(笑)。みんなも負けず嫌いだからね、それで何となく競走のようになっていっただけです。でも瞬発的に走ることが狙いで、別に競い合ってはいないです」
菊地や若手選手が本能的に先に行こうと駆け出すようになった。さらにオリヴェイラ監督の方針もあって、ハーフタイムダッシュの質は高まっていったのだ。
前半終了の笛が、リザーブの選手たちにとってウォームアップスタートの合図になる。今季のそんなシーンを見られるのも、あと少し(もちろん、来季も継続されるかもしれないが)。11月10日には元浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督の率いる北海道コンサドーレ札幌とアウェーで対戦するなどリーグ戦は残りわずか3試合。さらに……ぜひ天皇杯決勝まで全力で駆け抜けてもらいたい。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI