そして内田篤人は伝説になった
内田篤人の一撃が、アジア初タイトルへつないだ。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
準決勝のアディショナルタイム弾でつないだ、自身とクラブにとって初のACL制覇。
[ACL決勝 2nd-leg] ペルセポリス 0-0 鹿島/2018年11月10日/アザディ・スタジアム(テヘラン=イラン)
※2試合トータル2-0で、鹿島が優勝
鹿島アントラーズが11月10日、アザディスタジアムに10万人を集めたイランの首都テヘランでのペルセポリスとの一戦をスコアレスドローに終え、2試合トータル2-0で史上初となるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を果たした。
このイラン遠征には全員が帯同しているわけではない。国内に残ってトレーニングを行っている選手たちもいる。左ハムストリング筋損傷から間もなく復帰予定の内田篤人もその一人だ。
10月3日のACL準決勝・水原三星とのカシマサッカースタジアムでの第1戦。2点先取されながらも終盤の猛攻で追いつき、そして残すは1プレー……アディショナルタイムに攻撃参加した内田が、劇的な逆転ゴールを決めた。鹿島が3-2の勝利。ACLに懸ける特別な思いを語ってきた男が「俺にとっては無失点で終えられなかったことのほうが悔しい。でも、チームにとっては大きい1点になったと思う」と、鹿島の勝利のためにねじ込んだ一撃だった。
シャルケ04から移籍したブンデスリーガ2部のユニオン・ベルリンでは、調子を上げてきたときにケガに苦しんだ。そして「そろそろ帰ってくるつもりでいた。そのなかで流れもあった」と、今季、鹿島への復帰を決断した。
長らく空き番号だった鹿島の背番号「2」をつけて、自身も徐々にパフォーマンスを高めていった。そして好不調を繰り返すチームにあって、「昨季最後にタイトルを逃した理由がなんとなく分かる」と言い、最近は試合の締め方や勝利からの逆算を、チームメイトに徹底させた。
ACLは内田にとって特別か――「もちろん、もちろんだよ」と内田は頷いて語っていた。彼自身もまだ獲得したことのない、今季最も欲していたタイトルだった。
それにしても、あの水原三星戦のゴールは、できすぎだったな、と思う。
起死回生の一撃が次へつなぎ、鹿島一丸で掴んだタイトルだ。その象徴的存在としてでもあり、内田篤人は鹿島の伝説の一人として、語り継がれるだろう。ちょっと、大げさだが、「やっぱり内田ってすごいね」という具合に、鹿島の誇りとして。
もちろん、本人はすでに今季残す大切な試合で復帰を果たすことに集中しているはずだが。
それにACLを制したことで、鹿島は12月にUAEで開催されるクラブワールドカップ(CWC)に出場権を得た。「僕らにとってはリベンジを果たす機会」と昌子源は真顔で言っていた。リベンジを果たす相手は2年前の決勝で敗れた、レアル・マドリーのこと。初戦メキシコのグアダラハラ戦を勝ち上がれば準決勝で対戦できる。
鹿島と内田の2018シーズンの物語は、まだまだ続く。
文:サカノワ編集グループ