中村俊輔はどこでプレー?現役続行を後押しした川口能活の言葉
東京VとのJ1参入プレーオフ決定戦に臨んだ磐田の中村俊輔。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
本人は「完全燃焼してから、と思っている」。磐田からオファー、複数クラブが獲得を検討。
ジュビロ磐田の中村俊輔は12月18日のJ1参入プレーオフ決定戦の東京ヴェルディ戦、2-0の勝利を収めてJ1残留を果たしたあと、現役に懸ける強い想いを語っていた。その背中を押したのは、43歳で引退を決断した横浜マリノスと日本代表時代の”大先輩”である川口能活(前SC相模原)の存在と言葉だった。
40歳になる中村は2018シーズン、リーグ戦16試合出場ノーゴールに終わった。2009年から10年2月まで在籍したスペインリーグのエスパニョール時代の13試合0得点以来、シーズン通しての無得点は自身初めてだった。「ちょっとメンタルが緩くなり、そろそろ引退みたいなことがチラチラ見えてくる」なかで、川口の引退を知った。そこで「完全燃焼しきれただろうか」と自問自答して、「もうちょっとやりたい、やらなきゃいけない」と思えたという。
中村は次のように語っていた。
「能活さんのような人が引退していなくなると、自分のモチベーションにも正直影響はある。だからこそ『完全燃焼してから』と思っている。
今年(2018年)は手術したとはいえ時間がかかり、長く(戦列を)離れてしまった。ちょっとメンタルが緩くなり、そろそろ引退みたいなことがチラチラ見えてくるとは、こういう感じなのかな。って時に能活さんのニュースが飛び込んできた」
少し弱気になりかけた時、川口の2018シーズン限りでの引退を知る。そこで中村は改めて自分自身を見つめ直す機会にもなったと言う。
「逆に自問自答できるチャンスをもらえて、僕が能活さんのようにもがいたかというと、そうでもない気がした。もうちょっとやりたい……、やらなきゃなと思えた。
師匠だから。能活さんがいなければ、今の僕はいなかった。
プロ1年目に同じトレーナーのところに誘ってくれて、送り迎えもしてくれた。事務所の忘年会で挨拶しようと思っていたら(参入決定戦)2日前に直接連絡をもらってしまい、ちょっと驚いた」
そして川口の言葉が、中村の心にもう一度火をつけた。
「そこで『いろいろ厳しいだろうけれど頑張れよ』と言ってくれて、器が大きいなと思いました。オフの間に足首の問題は済ませ、足首は大丈夫でも別のところが痛むとか、そういったバランスもちょっと直していきたい。
絶対に自分のプレーや感覚で、まだまだいなせる感覚はあったから。ただゼロ(リーグ戦ノーゴール)はひどいので、クラブとファンには申し訳なく思っています」
中村は現役として、ピッチに立ち、川口に恩返しをしたいと考えていた。
ジュビロ磐田との契約は昨季限りで一旦満了を迎えた。ただクラブは新たなオファーを提示しているという。一方で、他クラブも獲得を検討している。果たして、2019シーズン、中村は何色ユニフォームを着て、どのクラブのサポーターの前に立つのか。ピッチ上で何かを起こしてくれそうな予感は十分に感じられる。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI