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【浦和】杉本健勇が平川忠亮に伝えた「14番」の覚悟

浦和の「14番」を継承したFW杉本健勇。(左か山中亮輔、右は池髙暢希 )(C)SAKANOWA

電話で直接あいさつし、返ってきた反応は――。

 セレッソ大阪から浦和レッズに完全移籍で加入したFW杉本健勇は、オファーが届いたあと「浦和で勝負する」と決断を下すことに躊躇いを感じなかったという。一方、少しだけ逡巡したのが背番号だったと明かしている。

 昨季まで17年間浦和に在籍し、浦和が獲ったすべてのタイトルを知る平川忠亮の背番号14を引き継いだ。「14」は果たして自分がつけていいものか。杉本は平川に直接相談をしたそうだ。

これまで試合で対戦したことはありましたが、面と向かって話したことはなかったです。平川さんと直接お会いして話をしたいと思い、ただ、うまくタイミングが合わなかったので、電話であいさつをさせてもらいました」

 そこで杉本は14番をつけたいという想いも伝えた。

「僕はヨハン・クライフに憧れていて、14番は大好きな番号でした。ただ、これまでつける機会はありませんでした。

 昨シーズン限りで平川さんが引退されて、10年以上にわたってレッズの歴史を作ってこられたクラブのレジェンドである方で、敬意しかありません。レッズの14番は重みがあると、迷っている自分がいました。

 ただ、『他の選手がつけて悔やむんだったら、自分が今この目の前にあるこの番号をつけたい』と思いました。

 平川さんの魂は、しっかり俺が引き継ぎます。今は平川さんの名前の入った14番のユニフォームしかいないですが、自分の名前の入った14番がもっとみんなに知られ、売られるようにしたいです」

 そういった思いを電話で伝えたという。

 すると平川からは次のような反応が返ってきたという。

「『つけてくれて嬉しい』と言ってもらえました。それが本音かどうか分かりませんけれど……。ただ、素直に嬉しかったです。自分がこの番号をつけて活躍して、今年終わった時にもう一度、そのように言ってもらえるように、活躍したいです」

 その経緯を経て「浦和レッズ 14番 杉本健勇」は誕生した。

 新体制発表会見でユニフォームに袖を通した時、緊張した面持ちを浮かべた杉本がいた。

「(2015年に)川崎フロンターレへ移籍した時は若くて、他の人の意見や世間の目とかを気にしてしまっている自分もいました。いろんな人に相談しました。けれど今回は、自分自身で決めました。

 セレッソや今まで応援してくれたファンの方々がいろんな意見を持っているのは分かります。ただ、自分が決めた道を、信じて行くだけだと思っています。いろんなことを言われました。批判的な意見も目にしました。

 ここからからは応援してくれるファンやサポーターの方のために、頑張りたいですし、しっかり活躍したいと思います」

 杉本は「ためにも」というところでアクセントを強めた。

 興梠慎三、ファブリシオ、アンドリュー・ナバウト……前線はタレントも豊富だ。ただ、そのなかで戦うことが本望であるとも言っていた。

「それも望んできたこと。競争が激しいことはもちろん分かって、ここに来ることを選びました。自分がない武器を持っている選手もとても多いので、そこを吸収して、いいものを盗みながら成長していきたいと思います」

 杉本はそのように覚悟を示した。浦和のために闘うという強い覚悟だった。そして杉本と浦和の14番の新たなストーリーも、ここから始まる。

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

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