札幌のハンドはレッドカードが妥当。一方「決定機の誤解」について上川氏が解説
開幕戦で途中出場し、決定機を作り出した湘南の大橋祐紀。ハンドに泣かされたが……。(C)SAKANOWA
大橋の突破を進藤が手で止め、ボールの方向も変わっている。
[J1 1節] 湘南 2-0 札幌/2019年2月23日/Shonan BMWスタジアム平塚
湘南ベルマーレ対北海道コンサドーレ札幌の62分、湘南の大橋祐紀がボール奪取からドリブルを仕掛けて札幌陣内へ仕掛ける。スライディングタックルに来た札幌の進藤亮佑の逆を取り、中央へカットインして抜き去る。と、進藤が左手を伸ばしてボールを止めた。
笛を吹いた岡部拓人主審は進藤にイエローカードを提示。ただ、決定機阻止であり、曺貴裁は「レッドカードでしょう!」と猛抗議をした。
このシーンについて、「DAZN」の新コンテンツ「Jリーグジャッジリプレイ」で、日本サッカー協会の上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャー、Jリーグの原博実副理事長、タレントの平畠啓史氏が映像を見ながら検証。3人がそれぞれの立場から考えを示して議論を展開した。
上川氏は「ボールがハンドによって少し後ろに下げられています。24番の大橋選手が、あのままゴールに向かっていれば得点機会になっていたと考えれられ、それを阻止したということで、本来はレッドカードが正しい判定であったと言えます」と説明した。
一方で、判定を下す際の「決定機」の解釈について、上川氏は次のように説明した。
「まず、その瞬間にドリブルをしている選手のことだけを考えます。(平畠氏「周りにさらにフリーの選手が二人いるが?」)そこまで考えてしまうときりがないので(考慮しません)」
そのように、判定基準の「決定機」は、あくまでボールを持った選手の状態のみを考えることを強調していた。原氏も「なるほど。(ドリブルをしている)大橋だけのことを考えるんですね。さらにその先に味方がいて、ドリブルも、パスもできて、選択肢がいくつもある、というのは関係ないということですね」と理解を示した。
上川氏も改めて「あくまで選手が、ボールをコントロールできる状態にあるかが重要。このシーンでは、24番の大橋選手はコントロールできる状態にあったと言えます」と説明した。
加えて上川氏は「今回の判断は難しかった」と、その背景についても説明した。
「札幌が自陣でボールを保持し、主審は相手陣内に攻めてくるだろうと予測して湘南陣内でポジションを取っていました。そこで(札幌が自陣で)ボールが奪われます。ボールを保持した湘南が一気にカウンターを仕掛け、そこから問題のシーンが起きています」
主審がすぐには追いつけない展開になったのだという。その中で、むしろ「ハンドの反則を良く見ていた」とも捉えていた。
「(一瞬で主導権が変わり、主審とボールまでの)距離があったため、まずハンドかどうかに主審はフォーカスしています。そのハンドの瞬間に、決定機かどうかも同時に判断しないといけませんでした。ただアドバンテージを取って少しプレーを流したことで、次の瞬間には他の札幌の選手たちも戻ってきています。だから、大橋選手が決定機を作れていたかどうかを、そのハンドの瞬間に判断するのは非常に難しかったと言えます」
原氏も「ボールが味方にこぼれていればシュートまでプレーを流したでしょう。しかし(湘南の選手もプレーを止め)止めざるを得なかったというのも関係していますね」と語った。
レッドカードが妥当ではあったものの、主審がその一瞬で判断するのは非常に難しいケースだったということだ。上川氏の説明によって、自陣ビルドアップ時の予期せぬミスが、主審泣かせであることも分かった。また、審判など判定にかかわる関係者が「決定機」という言葉を使う際、一般的に使われる決定機とは解釈が異なる点も考慮していきたい。
今回であれば、主審が副審にハンドの瞬間の状況を確認をする、というのも一つの手であったかもしれない(副審にとっても、やや離れて位置で事象は起きていたが)。
DAZNは番組内では映像を活用して、より詳しく検証と分析をしている。また、DAZNはツイッターで「#Jリーグジャッジリプレイで取り上げて」のハッシュタグで、判定に疑問の残るプレーを募集している。
文:サカノワ編集グループ