扇原が明かす”サヨナラ同点弾”の背景「誰も諦めていなかった」
川崎戦で劇的同点ゴールを決めた横浜FMの扇原貴宏。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
90+5分のラストプレーでヘッド弾!今季初出場で結果を残す。
[J1 3節] 横浜FM 2-2 川崎/2019年3月10日/日産スタジアム
横浜F・マリノスのMF扇原貴宏が川崎フロンターレ戦で後半途中から今季リーグ初出場を果たすと、90+5分のこの試合のラストプレーで天野純の左コーナーキックにヘッドで合わせ、劇的同点ゴールを叩き込んでみせた。
直前の88分にレアンドロ・ダミアンにゴールを決められ一時、川崎に2-1とリードを許した。しかし、扇原はまだ行けるとすぐ頭を切り替えられたという。
「誰も下を向いていませんでした。まだまだ行けると声を掛け合い、そのみんなの姿勢が、同点ゴールにつながりました。そういう姿勢を、これからも大事にしていきたいです」
ラストプレーでの185センチの高さを生かしたヘディング弾。非常に高い打点からの気迫のこもった一撃だった。
「(相手のCKに対する守備は)マンツーマンで、ストーン1枚という情報は入っていました。越えてくればチャンスになると思っていました。そこでしっかり相手の前へ入ることだけを考えていました」
ボールがニアサイドの「ストーン役」を越えてきたところで、ここだとジャンプして飛び込み、「自分が走ってきたところに、良いボールが来てくれました。本当に感謝です」。ゴールが決まると同時に試合終了――いわば”サヨナラゴール”となった。
そして扇原は満足とまでは行かないものの、確かな手応えを得ていた。
「出場機会がなく悔しい想いを募らせていたので、なんとかチームを勝たせられるようにとピッチに立ちました。最低限の結果と言いますか、そこを残せたのは良かったと思います」
勝たせられなかった。ただ、2連覇中の相手に一つ「結果」を残せた――。それはポジティブに捉えていた。もちろん一方で課題も感じ取っていた。
「ブンちゃん(ティーラトン)も(広瀬)陸斗も器用な選手で、あとは(自分を含め)セカンドボールも拾えていたらもっと良かったと思います。(88分に一旦)勝ち越された場面は本当にもったいなかった。途中から入るからには、しっかり引き締められるようにやっていけるようにしたいです」
この日は三好康児が川崎との契約により出場できなかった。そこに大津祐樹が入って、チームに強力な推進力を与え、多くの選手が「誰が出ても戦えることを証明できた」と胸を張った。
そのなかで扇原もまた記録と記憶に残るゴールを記録し、サポーターを痺れさせた。マルチロールの大型レフティが、横浜FMの選手層の厚さであり、それぞれが異なる特長(武器)を持つ粒揃いな一面を改めて示した”95分間”の戦いぶりだった。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI