天野純が実感する「引き出しは増えた」。課題は開ける呼吸だ
横浜FMの天野純。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
横浜FM、鳥栖に勝ち切れず。「少し正確になりすぎて、大胆さが足りなかった」
[J1 6節] 横浜FM 0-0 鳥栖/2019年3月29日/日産スタジアム
横浜F・マリノスの天野純はスコアレスドローに終わったサガン鳥栖戦のあと、何とも言えないもどかしい想いを吐露した。
シュート数は18本対5本。ピンチはほとんどなく勝たなければいけなかった。そういった試合をずっとモノにできずにいる。いや、それでも進歩は見られた。こうした守備を固める相手にゴール前まで“詰める”ことができている。そう、だからこそ、勝ち切らなければいけなかった……。いろいろな想いが駆け巡り、しかし、やはり勝ち切れなかったことに肩を落とした。
立ち上がりは、鳥栖の出方を見ながらの戦いとなった。4-1-2-3の2列目に入った天野はどのように対応していくべきか。周囲と確認を取りながら、チャンスをうかがった。
「鳥栖はしっかり対策を練ってきた印象で、中盤4人で横幅をすべて防ぐようなポジショニングをしてきました。最初は少し様子を見て、どうすれば崩せるか、(広瀬)陸斗やキー坊(喜田)と話し合い探っていました。ただその後、90分通して、ハーフコートゲームのような状態を続けられました。今日は本当に、あとは最後、(シュートが)入るか入らないか。そこだけだったと思います」
では、なぜ崩し切れなかったのか? 天野は「少し正確に行きすぎて、大胆さが足りなかった。慎重に行きすぎた部分もあったと思うので、そこを改めて振り返り突き詰めていきたいです」と、相手の嫌がるプレーを選択できず、予想を上回るアタックを見せられなかったことを悔やんだ。
ただ、ポジティブな要素も少なからずあった。その一つが、スタイルのベースがあり、そのなかで臨機応変さが昨季より格段に身についてきたと感じられたことだ。
「相手を見ながら、しっかり今サッカーができています。サイドバックがインサイドにポジションを取る時もあれば、サイドに張り出す時もあり、同様にマルコス(ジュニオール)やテル(仲川輝人)も動いて、いろんな引き出しを今持てています。それを状況によって使い分けられれば、相手も嫌がるのかなと思います」
ゴールへ向かうための「引き出し」は増えてきた。あとは、開けるタイミングをどのように統一していくか。チームメイトとのその呼吸が一致しないと、それこそ宝の持ち腐れになってしまう。
「(鳥栖の守備を破れずスコアレスドローに終わったことは)自分たちがそれだけのチームだったと言えます。相手も1週間非公開練習だったと聞きますし、すごく気合いが入っているなって。この試合に勝てればいい、というチームには絶対に負けたくなかった。だからこそ結果で表したかったです」
スコアレスドローは、ポステコグルー体制下ではリーグ戦初めてだ。
「(クロスバーをシュート2本が叩くなど)点が入っていればOKでしたし、点が取れないと、こうしてモヤモヤするし。ただ、これまでは、対策を練られたら、ゴール前まで行けなかった試合もありました。そのなかで、ここまでしっかり進入できているのは、成長できているところです。そこは良いところかなと受け止めています。でも……やはり今日は勝たないといけない試合でした」
次はこのモヤモヤを吹き飛ばす勝点3を奪えるか。6節は4月5日、アウェーでの浦和レッズ戦だ。”マリノスのナンバー10”天野にも、その左足で観客を唸らせるようなインパクトを残す仕事が待望される。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI