「VARがあれば得点だった」広島、清水”疑惑のノーゴール”で審判部が見解
鹿島のクォン・スンテ。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
いずれもゴールラインを越えたあとGKがボールを掻き出す。JリーグはゴールラインテクノロジーよりもVARの導入を検討。
5月3日に行われたJ1・10節、サンフレッチェ広島対横浜F・マリノス戦、鹿島アントラーズ対清水エスパルス戦で、いずれもGKがシュートを掻き出していたシーンについて、VTRで確認するとゴールラインを越えていたことが明らかになった。果たしてこの「誤審」(審判が判定を誤るもののとは少し意味合いが異なるが)を防ぐことはできないのか? Jリーグでのゴールラインテクノロジーの導入はあるのか? 「DAZN」の人気コンテンツ「Jリーグジャッジリプレイ」で、日本サッカー協会(JFA)審判委員会のレイモンド・オリバー副委員長が詳しく解説をした。
問題のシーンは、鹿島対清水戦の3分に中村慶太の直接FKをGKクォン・スンテが弾き出したものと、広島対横浜FM戦の90+5分に川辺駿がねじ込んだシュートをGK朴一圭が倒れ込みながら掻き出したもの。両方とも判定はノーゴールで、試合は続行された。しかしオリバー氏は「ゴールでした」と判定が誤っていたことを認めた。
まず副審はオフサイドラインを追っているため、シュートが放たれた直後にゴールライン上までボールを追うことはまず不可能である。また今回のように、他の選手やGKの体がブラインドになり、ゴールラインを割ったかを確認するのも非常に難しい。
そういった現状を踏まえ、審判による人の目で完璧に判定することは不可能。そのうえでオリバー氏は「仮にゴールラインテクノロジーやVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されていれば、絶対に見直されていた事象でしょう」と説明した。
「しかしゴールラインテクノロジーは非常に高価であります。一方、VARはゴールラインテクノロジー以上に、見えない部分も把握できて、他の選択肢も可視化できます。PKなのか、レッドカードなのか、オフサイドなのか、ゴールなのか。ゴールラインテクノロジーよりもVARは様々な選択肢を得ることができます」
そのようにJリーグでは、基本的にゴールラインテクノロジーよりも、VARの導入について検討を進めていることが説明された。
「すべての試合にVARを導入するにはビデオ・アシスタント・レフェリーの人数が不足しています。J1のみならず、J2やJ3でも審判のトレーニングを始めています。(J1全試合で)VARのオペレーションをカバーできるように準備を進めています」
一方、VARが審判よりも「絶対的」な位置づけになることへの危惧も示した。
「実際に使用するのであれば、シーズン開幕から。そうでなければ、公平性を欠いてしまうからです。とはいえ、このシステムが世界で導入されて、まだ3年しか経っていません。それまではずっとVARがないなかで、サッカーはずっと続けて行われてきたわけです」
VARがもたらす功罪(各国で報告されているメリットとデメリットなど)についての議論も、今後されていきそうだ。いずれにせよ、基本的にはJリーグでのVAR導入の流れは、もはや止めることはできないだろう。
今季のJリーグでは、ルヴァンカップのプライムステージ13試合とJ1昇格決定戦の1試合のでVARが導入されることが決まっている。
文:サカノワ編集グループ