大槻節が浦和を変える。槙野智章「生まれ変わる、飛躍する選手も出てくる」
浦和の槙野智章。(C)SAKANOWA
監督交代…それでも浦和は3年連続タイトルを獲得してきたと前を向く。
オズワルド・オリヴェイラ前監督の解任により、大槻毅新監督が就任した浦和レッズは6月1日のアウェーでの川崎フロンターレ戦に向けて、3日連続で非公開練習を続けている。そのなかで5月29日の練習後、DF槙野智章は監督交代の責任を感じる一方、この状況を乗り越えるための”プラス材料”にも目を向けようとしていた。
オズワルド・オリヴェイラ前監督のもと、槙野は3バック、4バック、いずれもレギュラーとして重宝されてきた。それだけに、「監督が変わるということは結果が出ていないから。プレーしているのは選手たちで、そのなかでもプレー時間の長かった自分は大きな責任を感じています」と悔しさを滲ませた。
一方、監督交代後にも浦和は結果を残している――。限られた主要タイトルのうち一つを3年連続で獲ってきたという「事実」を、前向きに捉えようとしていた。
「裏返せば、監督が代わったあとの浦和は、すごく良い結果が出ている。なんだかんだ監督が交代したあと、しっかりアジアチャンピオンになり、天皇杯も勝ち、そのように明確な目標だったタイトルを獲れているのもまた事実です。もちろん、ネガティブな面もあり、現状の結果が出ていないことを考えれば、クラブのビジョンや現場の雰囲気を評価されがちです。ただ長いシーズンで見れば、目標を達成できている。クラブのビジョンのなかで選手がしっかりプレーを表現する、そこでブレないことが大切だと思っています」
3年連続でのシーズン途中の監督交代……。もちろん、クラブに問題はある。しかし、ピッチに立つ選手は目の前の試合に向けて、全力で努力をする。そうすることで応えるしかない。だからこそ前を向かなければならない。
槙野は続けた。
「クラブが下した決断に意見をするのではなく、僕たちはピッチで表現するのみ。クラブが下した決断を理解して、結果を出し続けるだけです」
退任したオリヴェイラ監督からは、「勝ちへのこだわり。日本人に足りない部分、それをここに残してくれました。タイトルや勝つことへのスピリットを植え付けてくれたので、そういった良いところは引き継いでいきたい」と感謝していた。
そして大槻新監督のもと、チーム内での争いもリセットされる。槙野もまたこれまでと違ったチームの姿を見せたいと意気込む。
「本来あるべき順位に戻すこと、そして見ていて楽しいサッカーをしないと。勝つサッカーはもちろんですが、この試合を見に行きたい、この選手を見に行きたい。そう思わせられる試合をしなければいけない。今日は良かったけれど、次はまったく別のチームになっていた、という姿を最近見せてきてしまった。もう一回見に来たい、ワクワクするようなサッカーを見せなければいけないと思っています」
「技術は1日2日では変わらないので、大きく変わらないといけないのは一人ひとりのメンタル面。メンタルをいかに安定させて試合に向かうかが大切ではないかと思っています。大槻監督もそこを強調されていて、『もともと力がある選手たちが、今は自信を失っているように見える』と言っていました。大槻さんは言葉で人を動かせる力を持っています。練習や試合で出てくる大槻節。それによって、生まれ変わる選手、飛躍する選手も出てくると思います。一つひとつの言葉をかみしめ、理解していきたいです」
6月1日の14節、アウェーでの川崎フロンターレ戦を迎える。リーグ連覇中だが、昨季は2勝を収められた。今季も節目の試合となるが、勝利とともに勢いを掴めるか――。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI