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【法政大→鹿島】上田綺世「前倒し加入」の真実。南米選手権前には決断していた

(左から)法政大の長山一也監督、上田綺世、鹿島の鈴木満強化部長。(C)SAKANOWA

法政大のチームメイトには「ずっと言わずにいた」。

 日本代表としてコパ・アメリカ(南米選手権)にも臨んだ法政大学のFW上田綺世が7月26日、この夏から鹿島アントラーズに加入することを発表した。現在3年生の上田は、卒業後の2021年春に鹿島に加入することが内定していた。しかし今年3月のDENSOカップでMVPを受賞するなど大学で突き抜ける活躍を見せ、コパ・アメリカ(南米選手権)を前にしたタイミングで1年半早めての「プロ入り」を決断した。

 コパ・アメリカでの悔しさがあり加入を決めた、というわけではなかった。

 今年2月に鹿島への2年後の加入を発表した直後だった。3月3日のDENSOカップで全日本選抜として北関東B・北信越から決勝ゴールを奪い、1-0の勝利を収めた。カターレ富山でもプレー経験のある長山一也監督はその時点で、「大学のレベルでは突き抜けた存在になっている」と改めて感じた。

 当初は特別指定選手として鹿島と法政大の両輪で大学3、4年と強化していこうという狙いだった。ただ永山監督も「彼がより成長していくための環境を整えないといけない」と検討。すると上田から前倒しで、この夏から鹿島中心にプレーできないだろうかという相談を受けた。

 そして、東京五輪代表(現U-22日本代表)にもコンスタントに選ばれてきた上田のコパ・アメリカ(南米選手権)での日本代表入りも決まる。

 長山監督は上田にコパの開催期間、鹿島入りを前提として関係者との調整を進めることを伝えた。

 果たしてそのような”前倒し”は可能なのか? その相談を受けた鹿島の鈴木満強化部長は、「ウチはまったく問題ない。むしろ歓迎でした」と上田の決断を喜んだ。ちょうど鈴木優磨の移籍話が浮上していた時期とも重なる。

 そして帰国のタイミングで、上田に鹿島入りの”GOサイン”が出た。

 上田はこの件をチームメイトにはまったく話してこなかったという。

「(この夏に鹿島に加わると)伝えたのはコパとユニバーシアードを終えて、帰国したあとでした。1週間ぐらい前でしょうか。練習後に永山監督が全員を集めてくれて、そこで自分の決意を伝えました。悲しんでいるような選手もいたり、いろんな反応がありました。ただ、自分がそのようにサッカー部からいなくなることが、むしろ、みんなにとっては、チャンスにもなると伝えました」

 上田は7月28日の練習から鹿島に合流する。プロ契約は8月2日から。ただ鈴木満強化部長は「即戦力。31日の浦和レッズ戦から試合に出て頑張ってもらいたい、というぐらい期待しています」とハッパをかけた。

「鹿島アントラーズとしてもこれからの後半戦、より重要度の高い試合が続くなか、かなり主力選手が抜けたチーム状況ではあります。そのなかで、今、上田選手という貴重な即戦力を得られたことを、本当に嬉しく思います。鹿島のジュニアユースの出身で、鹿島学園、法政大学と進み、大学で鍛えてもらい、このようなA代表にも選ばれるような選手になり、鹿島に帰ってきてくれたことを非常に嬉しく思っています」

 鈴木強化部長はそのように上田の成長ぶりと、まさにこのタイミングでの「プロ入り」を喜んだ。一つの流れができているようだ。

 そして上田は決意を示す。

「1年半プロになることを早めたことで、そこで何をできるかがすごく大事になる。まずはそこに注力したいです。決断できたのは、サッカーをやってきた16年の中で、この大学の2年半がとても濃い時間だったから。そこで出会った仲間たちは僕にとって大きな存在で、刺激を常にもらい、切磋琢磨し合い、僕を成長させてくれました。これからは鹿島のタイトル獲得に向けて貢献していきたい。法政にかかわってきてくれた皆さんに、応援してもらえる選手になりたいと思います」

 20歳の決断――。すでに多くの選手がプロになり、なかには海外に挑んでいったが、上田は「そこの舞台に僕はまだ立てていない。でも負けてはいるとも思っていない。何か秀でているところもあるのではないか。ここから活躍して追い付き、いつかは追い越したい」と語った。

 まずは1日も早い鹿島でのデビュー、そしてゴールを決めたい。

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[取材・文:塚越始]
text by Hajime TSUKAKOSHI

Title:HOSEI University FW Ayase UEDA transfers to KASHIMA ANTLERS.He made a decision before Copa. 

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