GK飯倉大樹が齋藤学と堪能した約15分間の”駆け引き”。「去年までの練習風景と重なった」
横浜FMのGK飯倉(写真は1月1日の天皇杯決勝より)。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
横浜FM対川崎の神奈川ダービーでデビューした後輩と共有した特別な時間。
[J1 6節] 横浜FM 1-1 川崎/2018年4月8日/日産スタジアム
川崎フロンターレに今季加入した齋藤学が古巣相手に、しかも慣れ親しんだ日産スタジアムで新天地デビューを果たした。そして、この日のマッチアップを「感慨深くもあり、楽しかった」と特別な想いで迎えたのが、横浜F・マリノスのGK飯倉大樹だった。
1-1の同点のまま迎えた77分、齋藤は阿部浩之と交代して出場。川崎の左ウイングに入った。何度か横浜FMゴール前まで進入してきたものの、そこで飯倉が立ちはだかりゴールを割らせなかった。
二人はともに横浜FMの下部組織出身。飯倉は1986年生まれの31歳、そして齋藤は90年生まれの28歳。飯倉は2005年、齋藤は08年にそれぞれトップチーム昇格を果たし、そこからレンタル移籍(飯倉はロアッソ熊本、齋藤は愛媛FC)など経験しながら苦楽をともにし、チームとともに成長してきた。
飯倉は振り返る。
「長くずっとシュート練習をしてきたし、一緒に飯にも行く仲だったから、何だか去年やそれまでの練習風景と重なりました。アイツはここにパスを出しそうだな、ループを狙いそうだな、カットインからシュートだな、っていろいろ考えながら、最後の約15分間プレーしていました」
先の先まで読んだ駆け引きと探り合い。まるで紅白戦のようだった。飯倉は続ける。
「あいつが18、19歳のときからずっと一緒にやってきて、一時苦しんで愛媛FCにレンタル移籍したり、そこから日本代表で活躍したり、そういった姿を見てきたから、ちょっと感慨深い……いや、ちょっと俊さん(中村俊輔)のときとはまた異なり、自分よりも年下の育ってきた選手とプレーするのは面白かったかな。ループの場面もミスキックだろうなと思ったから、アイコンタクトで笑い合ったり。あれは俺の中では嬉しかったし、楽しかった」
二人はピッチ上での駆け引きを、より深く特別な想いで”堪能”していた。何より飯倉が安堵したのは、ゴールを決められなかったこと。
「コンディション的にはまだまだこれから上がっていくでしょう。でも今日はアイツにやられなくて良かったです(笑)」
今回はそんな特別な空気が流れていた。これからの神奈川ダービーでは、飯倉対齋藤のさらなる駆け引き――対決にも注目が集まりそうだ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI