小さななでしこCB市瀬菜々が韓国代表FWチ・ソヨンを封じて掴んだ自信
なでしこジャパンの市瀬。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
20歳の新鋭がアルガルベの大敗から学んだこと、韓国戦シャットアウトに貢献!
こんな対決(デュエル)を制することができるようになったのか――韓国戦、市瀬菜々(ベガルタ仙台)のプレーに感嘆し、思わずカメラのシャッターを押す指が止まった。日韓戦に照準を合わせてきた韓国は序盤に勝負をかけてきた。主導権争いのなか、最重要人物であるチ・ソヨンがドリブルから強烈なシュートを繰り出す。その瞬間、市瀬が踏み出してブロック! 1対1を制したのはなでしこジャパンの20歳の新鋭DFだった。
先月のアルガルベカップ初戦のオランダ戦、チームの守備がハマらず、市瀬は再三に渡って裏を取られ、ユーロチャンピオンに6失点を喫した。そこから全員で徹底的に守備を見直した。そこであらゆる話に耳を傾け市瀬は彼女なりに解決策を探っていった。
この韓国戦で市瀬は「運動量を増やして、体の当て方を工夫すれば」と、タイトな守備を見せた。初招集から2年目、160センチのセンターバックが世界を見据えた末の戦い方。それが少しずつ結果につながりつつある。
「最後のシュートを打たれるところで足を出せれば失点しない」(市瀬)と怯まず、正面から挑む姿も不利なフィジカルを感じさせない。もちろん最後尾にいる熊谷紗季(オリンピック・リヨン)との信頼関係があるからこそできる積極的な守備であり、二人は試合中もことあるごとに言葉を交わして確認をしていた。
グループ1位にも3位にもなり得る13日のグループステージ最終節のオーストラリアとの決戦。熊谷ら周囲との連係をベースに、彼女らしい粘り強い守備と一歩も引かない負けん気を貫けば、勝利を手繰り寄せられるはず。アジア最強のオーストラリア攻撃陣を抑えることができたとき、初めて「これが日本の守備だ」と自信を持って言えるはずだ。試合後にそう言って、嬉しさを隠して照れ笑いを浮かべる市瀬の姿を見せてもらいたい。
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA