来年のW杯へ高木ひかり、中里優、阪口萌乃…ニュージーランドで咲いたなでしこ
(左から)阪口萌乃、高木ひかり、中里優 写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
ゴールは田中美南に集中したが――。
[国際親善試合]日本女子代表 3-1 ニュージーランド女子代表/2018年6月10日/ニュージーランド・ウェリントン
なでしこジャパン(日本女子代表)がニュージーランドに3-1の勝利を収めた。FIFAランキングは日本が11位、ニュージーランドが20位。試合後の記者会見で、地元記者から厳しい声が出たが、守備的布陣で臨んできたニュージーランドの攻め手はカウンターのみ。日本としては、アジアから世界仕様に切り替え、守備と攻撃のトランジションを頻繁に繰り返すような展開にならなかったことは残念ではあった。ただスペースのないファイナルサード(ピッチを3分の1に区切った、相手ゴール前の3分の1)をいかに攻略するのか、アイデアを出し続けたことで収穫を得た90分間となった。
パワーバランスを考慮した高倉麻子監督はチーム力をできる限り落とさず、バランスを見てアジアカップで力を出し切れなかった選手を各ラインに配置した。ハットトリックの活躍を見せた田中美南(ベレーザ)もその一人。「その悔しさを持って試合に入りました」(田中)。アジアカップでは前線で噛み合わず、最後はベンチを温めるしかなかった彼女が爆発した。
また右サイドバックには、高木ひかり(ノジマステラ)が先発。アジアカップでは出場機会が訪れず、「下を向かず食らいついていきます」と自らを奮い立たせながら練習に励み、その姿勢が評価された。開始直後から何度もサイドハーフを追い越し、ペナルティエリア内まで切れ込み足を振り切る積極性を見せた。
左サイドから鋭いラストパスを供給したのは、直前のケガでアジアカップを辞退した中里優(ベレーザ)だ。日本の中でも最も小柄な148センチの彼女だが、フィジカルの差を感じさせない堂々としたプレーで先制点をアシストした。
その中里の代わりにアジアカップに招集されたのが阪口萌乃(新潟L)だった。大会中は出場のチャンスを掴めなかったが、この日、A代表デビューを果たした。後半から出場するとまったく物怖じせず、なでしこの独特であり素早いテンポのサッカーに瞬時に対応した。
ゴールこそ田中に集中したが、アジアカップとは異なる新たな選手が台頭した一戦でもあった。こうした選手たちとアジアカップで活躍した選手たちとの間で、戦術理解度の差はなく、メンタル面での成長も感じさせた。
もちろん、相手が仕掛けてきていたら、どういった展開になっていたかは分からない。来月にはアメリカ遠征「トーナメント・オブ・ネイションズ」があり、アメリカ、オーストラリア、ブラジルという強豪との3試合が組まれている。
守備に全神経を注ぎ、そこからどのように攻撃に転じるのか。アジアカップ優勝を支えた阪口夢穂(ベレーザ)の負傷による長期離脱の穴をいかに埋めるのか。このニュージーランド戦で活躍した選手にとっても、勝負の場となる。来年のワールドカップ・フランス大会に向けて、このニュージーランド戦をステップに、重要な3試合を迎える。
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA