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【検証ベルギー戦】「延長勝負」「90分決着」最後にブレた意思疎通

日本とベルギーの背番号10。ピッチに倒れ込む香川に手を差し伸べるアザール。写真:新井賢一/(C)Kenichi ARAI

「本田投入」は攻めろというメッセージに。しかし、それが”いつ”なのか一つになれず。

[ロシアW杯 ラウンド16] 日本 2–3 ベルギー/2018年7月2日(日本時間3日午前3時)/ロストフ・ナ・ドヌ

  日本代表対ベルギー代表戦の81分、イエローカードを1枚もらっていた柴崎岳に代えて山口蛍、そしてハードワークを続けていたが走力の落ちた原口元気から本田圭佑に交代される。

 グループリーグ第3戦・ポーランド戦、西野朗監督は最後のカードとして82分に長谷部を投入。そのカードを使うことで全員に「このまま行けば決勝トーナメントOK」というメッセージを送り、決勝トーナメント行きの切符を手にした。

 そして今回の「本田投入」。それはもちろん”勝ちに行く”という西野朗監督のメッセージが込められていた。

 しかし、それが90分決着なのか、延長勝負なのか。特に時間が経過するごとに意思の共有ができずにブレていった感が否めなかった。案の定、最後の最後――アディショナルタイムにCKのチャンスを仕留めようと攻撃参加したが、選手たちは戻り切れず数的優位を作られ、カウンターから失点を食らった。

 スコアは2-2。狙いとしては、ベルギーの猛攻を受けていたなかで、本田のボールキープ力を生かして高い位置で起点を作り、あわよくばカウンターからゴールを狙う。またはゴール前でファウルをもらっての直接FKやCKなどセットプレーを生かす。そんなプランだったはずだ。

 ただ、日本のなかで、90分で何とか決着を付けようと、攻め急ぐシーンが目立っていった。長友が強引にゴール前へ仕掛けてボールを奪われ、カウンターを食らう(ピンチだったが、昌子がルカクを抑える)。また、香川もやや強引なクロスを放ち攻め急いでしまう。

 大迫がコンパニに倒されてFKのチャンスを掴んだように(本田の無回転シュートが枠を捉えた)、もう少し、したたかに時間を使いながら、相手の嫌がる日本の時間を作りたかった。

 もちろん、日本もできれば90分で決着をつけたかったはずだ。例えば酒井宏樹もタッチラインでボールコントロールを誤り、競り合いで足を痛めている(結果的に、そこですぐSBを代えられず、選手層の薄さも露呈)。延長に入ったほうが不利だと思っていた選手もいたかもしれない。一方、守備陣はどっしり構えてルカクにゴールを与えず対応し、耐え続けて勝機を待つ展開も見据えていた。

 日本の目標は「ベスト8進出」。ならば延長戦勝負にするほうが、ベルギーは嫌がったはずだ。何より優勝を目指すベルギーこそ、90分で試合を終わらせたかったに違いない。相手が嫌がるような粘りを見せて勝機を見出したい日本としては、120分勝負に持ち込み、日本の望む”我慢合戦”に持ち込み、残った2枚のカード(今大会から延長に入ると1枚カードを切れる)を有効活用する。そんな展開に持ち込みたかった。

 ところが最終盤、互いのゴール前でのシーンが続き、ベルギーが求めてきた撃ち合いに日本が乗ってしまった。相手の思う壺と言えた。もしかすると……ベスト8よりも先(疲労をできるだけ蓄積したくない)、まで脳裏にチラついてしまった選手がいたのか。延長勝負でいい、というメッセージを誰かが発することはできなかっただろうか。

 そのあたりが長谷部のいう「甘さが出てしまった」という面と言える。日本の今大会の戦い方の礎となっていた、どのように凌いで勝ちにいくのか――。その意思疎通を最後に欠いたのは残念でならなかった。

 もちろん長友は「すべての力を出し切った。悔いはない」と語っていた。今大会4試合できて、最後に本気のベルギーと対戦できたことで、実力の差を見せ付けられ、日本のあらゆる現在地を知ることができた。それは大きな収穫であり、これからの日本サッカー界の指針になる。

文:サカノワ編集グループ